フォード プーマ(Ford Puma)はフォード・ヨーロッパで製造、販売されているBセグメントのクロスオーバーSUVです。人気のジャンルであるSUVですが、プーマはコンパクトながら200PSを発揮するガソリンターボエンジンに6MTを組み合わせた“ST”の設定をはじめ、非常にスポーツ志向・プレミアム志向の強いモデルとして作られており、その個性とコンセプトは多くのライバルとは一線を画します。
この記事ではフォード プーマについてモデルの成り立ちや内外装の詳細、エンジンのスペック、価格情報などを紹介します。またハイパワーなコンパクトSUVであるアウディ SQ2やフォルクスワーゲン T-Roc Rとの比較と評価、そして日本へフォード プーマを並行輸入するための情報も解説します。
フォード プーマとは
2010年代以降使い勝手の良さから普及を続けるクロスオーバーSUVですが、フォード プーマのスポーティー・プレミアムなコンセプトは他に類を見ません。グレード構成は2020年に追加された真打ちというべき200PSのガソリンターボに6MTを組み合わせたSTをハイエンドにに、そのテクノロジーを継承したスポーティーモデルのST-Lineと、そしてコンサバティブな仕様でスポーティーさよりもプレミアム性を重視したTitanium(タイタニアム)”をラインアップ。ST-Lineとタイタニアムにはマイルドハイブリッドも設定されています。
実はフォードがプーマという名前の自動車を販売するのはこれがはじめてではありません。かつて1997年から2001年までフォード・ヨーロッパはプーマというコンパクトなスポーツクーペを販売していました。主力のコンパクトカー、フィエスタをベースに作られたプーマの生産期間は短く後継モデルも設定されませんでしたが、その完成度は高く評価されました。フォードが主催したプーマのワンメイクレースの盛り上がりを筆頭にモータースポーツシーンでの活躍もあり、日本には輸入されなかったものの、その名前をご存知の自動車好きも多くいらっしゃるのではないでしょうか。
生産終了から18年を経てその名前が復活したプーマ。フォードに限らず自動車メーカーが古いモデルの名前を別のコンセプトの新型車に使うケースは少なくないものの、フォードはプーマの名前を復活させるにあたり、SUVであっても単なる名前だけではなく過去のプーマの延長線に置いたように感じられます。フォードが展開する1つの車種という枠を超えて、プーマには小型ながらスペシャリティモデルとしての雰囲気が随所に伺えるのです。
なお、同じフォードはBセグメントのクロスオーバーSUVとしてエコスポーツを2003年から展開してきており、2012年に登場した2代目モデルもプーマとも併売されています。エコスポーツはBセグメントのSUVの中でもとくにヘビーデューティーな用途に耐えられるようなコンセプトで、そして世界中で販売されています。タフネスなSUVとしての用途をエコスポーツに委ねられたからこそ、フォードはプーマを販売地域とグレードを限定したスポーツ・プレミアムモデルとすることができたといえます。
プーマのグレード構成
あらためてプーマのグレード展開について確認してみましょう。前述のとおりフラッグシップであると同時に最注目モデルののST、そんなSTと共通のイメージを持ちながら経済的なエンジンや2ペダルの組み合わせも用意して先行販売されてきたST-Line、STとST-Lineに比べるとクロスオーバーSUVのイメージを持つタイタニアムの3種類にプーマは大きく分かれます。
このように並べるとタイタニアムがあたかもエントリーグレードのように見えますが、タイタニアムのグレード名はこれまでフォードの各上級モデルに設定されてきたもので、実際プーマ タイタニアムの装備や内容もその名前に恥じません。プーマはラインアップを上級グレードに絞ることで、プレミアムモデルとしての位置づけを明確にしているのです。
またタイタニアムとST-Line、いずれのグレードにも”X”という装備充実仕様が設定されている(タイタニアムX、ST-Line X)ほか、ST-Lineには更なる上級モデルとして主にインテリアの質感を高めたST-Line ヴィニャーレ(Vignale)が追加されています。これにハイパフォーマンスモデルのSTを加えた総計6グレードがプーマのすべてのグレードです。ただし仕向地によってグレード展開は異なり、たとえばドイツ仕様ではすべてのグレードが用意されていますが、イギリス仕様右ハンドルではタイタニアムXが購入できないといった違いがあります。
ちなみにヴィニャーレは存在したイタリアのコーチビルダーの名前を復活させたもの。2013年以来フォード各車種で展開されて好評を博していますが、これまではタイタニアムをベースとしたモデルとして展開されてきました。敢えてST-Lineをベースにヴィニャーレが用意された点にもプーマのコンセプトの特徴が伺えます。
エクステリア
プーマのエクステリアを特徴づけるのは、アーモンド型のヘッドライトと、これにあわせて左右に峰を持つボンネットです。獰猛なようにも、あるいはどこか愛くるしくも見えるこのフロントマスクは、2010年頃から続いているフォードのデザインの流れとは少し異なるもので、むしろ同じ名前を持つかつてのスポーツクーペの面影を強く感じさせるものです。
全体的なシルエットはSUVの兄貴分のクーガとよく似ています。しかしフロントウィンドウの付け根をわずかにブラックアウトさせるといった演出はプーマ独自のものです。フェンダーを強調するプレスラインも、プーマの方がよりアグレッシブな造形にデザインされています。
タイタニアムではホイールアーチの周囲が無塗装の樹脂で囲まれ、SUVらしい雰囲気が強調されています。一方でST-Lineではホイールアーチ周囲はボディ同色となり、またフォグライトベゼルの位置が低いフロントバンパーが採用されています。STではST-Lineに対してフォグライトベゼルなどを敢えて無塗装樹脂で仕上げ、さらにルーフもブラックアウト。エグゾーストパイプも2本出しとなり、アグレッシブな雰囲気を強めています。
低く構えたような印象を受けるST-Lineですが、実際には最低地上高は標準モデルで166mmのところ、ST-Lineでは164mmと2mmの差に留まっており、こちらも一定量が確保されています。タイタニアムとST-Lineのどちらを選ぶかで走破性の違いを理由にする必要はなさそうです。
インテリア
プーマのインテリアは2016年に登場したフィエスタ Mk8を皮切りにフォーカスやクーガでも採用されたレイアウトが踏襲されています。すなわちダッシュボードのセンタークラスターの上端に8インチのタッチパネル、FORD SYNC3を配し、その下にエアコンの吹出口、エアコンの操作パネルを配したものです。
ほかのフォードのモデルでも同様ですが、これらのインターフェイスはタッチパネルに依存せず、たとえばオーディオのボリューム操作や、エアコンの風量や温度調整などで物理的なダイヤル操作が可能なように配慮されています。このように運転中に必要性の高い機能に対して、ブラインドタッチでの操作性が損なわれていない点はフォード各モデルの美点です。
インストルメントパネルはタイタニアムが物理的な針を持つアナログのスピードメーターとタコメーターを装備するのに対して、ST-LineとSTでは12.3インチの液晶画面がメータークラスター内を占め、仮想アナログメーターをはじめ多彩な情報を表示します。この点も機能的な優劣や差別化をはかったというよりも、コンサバティブなタイタニアム、革新的なST-Lineという棲み分けをはかっているようです。
シートもグレードによって差異がありますが、”X”ではないタイタニアムやST-Lineでも運転席・助手席ともにランバーマッサージ機能が標準搭載されている点に驚かされます。プーマがプレミアムモデルであることがここからも伺えます。
パワートレイン
フォード プーマには直列3気筒のガソリンターボエンジン、直列4気筒のディーゼルターボエンジンが用意されています。また直列3気筒ガソリンにはマイルドハイブリッド仕様も設定されています。
最注目株は最強モデルであるSTに設定された1.5 EcoBoostと呼ばれる直列3気筒のガソリンターボエンジンです。1.5Lの排気量ながらターボで200PSと320Nmを発揮、100km/hまでの加速は6.7秒、最高速度は220km/hという俊足です。ここに組み合わせられるトランスミッションは3ペダルの6MTのみという構成。ハイパワーモデルのパワートレインとして2ペダルモデルが増える2020年現在、ストイックな設定は存在感を放ちます。
ST以外のモデルには直列3気筒のガソリンターボ、マイルドハイブリッド、直列4気筒のディーゼルターボが用意されています。
1.0 EcoBoostと呼ばれる直列3気筒ガソリンターボエンジンは経済性に優れています。エンジンの仕様はデビューから約1年の間に複数回の変更を受けてきましたが、2020年9月以降は95PSと125PSの2仕様が設定され、前者には3ペダルの6MTが、後者には7段デュアルクラッチトランスミッションが組み合わせられます。
1.0 EcoBoost Hybridは上記1.0 EcoBoostにマイルドハイブリッドを併用した仕様です。複数のハイブリッドシステムを展開するフォードですが、1.0 EcoBoost Hybridはトヨタのハイブリッドのように積極的にモーターを併用するものではなく、スズキのマイルドハイブリッドやスバルのe-BOXER、あるいはマツダのスカイアクティブ-Xなど搭載されているような、ガソリンエンジンの効率の悪いところをモーターが助けるようなコンセプトのハイブリッドです。欧州市場でのハイブリッドモデルの急速な普及の背景には当地のCO2規制もあるのですが、それでもハイブリッドを単なる低燃費モデルに終始させず動力性能を向上させる方向に活かすのがフォード流。ノンハイブリッドモデルよりもパワフルな125PSと155PSの2仕様が用意されています。組み合わせられる変速機は3ペダルの6MTのみです。
1.5 EcoBlueと呼ばれる直列4気筒ディーゼルターボエンジンは120PSと285Nmを発揮。100km走行するのに必要な燃料消費量は1.0Lのガソリンを下回っており、プーマの中でももっとも経済的なモデルです。
なおこれらのエンジンの設定は仕向地によって絞られます。ドイツ仕様左ハンドルではすべての仕様を選べますが、たとえばイギリス仕様(右ハンドル)では2020年10月現在は1.0 EcoBoost Hybridのみの展開です。2021年春には、STが追加されるものの通常のハイブリッドなしの3気筒ガソリン、もしくはディーゼルは残念ながら選択できません。
駆動方式は前輪駆動に限られますが、任意に選択可能なドライブモードを搭載。ノーマル、エコ、スポーツ、そしてスリッピー&トレイルという低μ路に対応したモードが設定されており、一定の走破性を確保しています。
主要装備
プレミアムモデルとしての位置づけからプーマにはオプションなしでも必要な装備が揃っています。たとえば8インチのインフォテイメントシステム”SYNC3″、フルオートエアコン、そして上でも触れたマッサージ機能が搭載されています。
ST-Lineはタイタニアムに対してアナログメーターに代わり12.3インチのフル液晶スピードメーター、またランバーサポート付きのスポーツシートが組み合わせられます。ST-Line X、タイタニアム X、そしてSTではB&Oの675ワット10スピーカーシステムも追加され、トリムもレザーが用いられるなど質感も更に向上します。
先進安全装備は歩行者、自転車検出機能付きの衝突防止自動ブレーキ、タイヤ空気圧低下警告機能、そして車線維持機能と逸脱警告機能が付いています。クルーズコントロールは敢えて追走機能の付いていないものが搭載されていますが、これはメインとなる6MTとの相性を考慮した判断だと考えられます。
モデル総括
歴史を振り返ると2000年に登場したBMW X5や2002年のポルシェ カイエンは、SUV = 悪路での走破性やアウトドアで楽しむためのジャンルという概念を打ち崩した先駆者となりました。以来SUVは世界的に人気を集め、2020年現在は超高級車からコンパクトカーまで幅広く生産・販売されるようになりましたが、とくにコンパクトカーではユーテリティ性との両立が求められ、実用色の強いモデルが増えてきていました。
そんな中でプーマはラインアップをスポーツグレード、あるいは上級グレードに絞り込み、さらに2ペダルの割合が増える欧州市場で敢えて6MTを中心に組み合わせました。大きさこそBセグメントですが、コンセプトはポルシェをはじめとしたスポーツカー専業メーカーがラインアップする上級SUVに相通じる、あるいはより先鋭化しているともいえます。
群雄割拠のSUV市場の中で鮮烈な印象を放つプーマは、シルエットは違えども、その名前を冠したスポーツクーペの後継モデルの再来と呼んでも良いかもしれません。
サイズとスペック
【全長×全幅×全高】4,226×1,805×1,520 mm
【ホイールベース】2,588mm 【トレッド】前/後:- / -mm
【車両重量】1,358kg
●エンジン
【構成】水冷直列3気筒自然吸気 DOHC12V フロント横置
【総排気量】1,496cc 【直径×内径】 84.0×90.0mm 【圧縮比】-
【最高出力】200ps(147kw)/6000rpm 【最大トルク】320Nm/2500-3500rpm
【燃料容量】42L
●駆動系
【駆動方式】FWD 【トランスミッション】6MT
【サスペンション】(前)マクファーソン・ストラット / (後)トーションビーム
【ブレーキ】(前)ベンチレーテッドディスク / (後)ディスク
【タイヤ】(前後)-/-
●パフォーマンス
【最高速度】220km/h 【0-100km/h加速】6.7秒
【燃費】約16.7km/L(新欧州複合基準)【価格】英国仕様 2020モデル:£28,495(予価)
ライバル
2020年現在、クロスオーバーSUVはすっかりメインストリームになり車種がひしめき合っています。Bセグメントはアウディ Q2、DS DS3クロスバック、セアト アローナ、オペル モッカ、ルノー キャプチャー、VW T-Roc、シュコダ カミック、トヨタ ヤリスクロス、マツダ CX-3、スズキ SX4 S-Crossなどが展開され、その全容を把握するのは容易ではなくなりました。
そんな中でクロスオーバーSUVとしてはやや異色なプーマですが、真正面から対峙するライバルにはどんなモデルがあるでしょうか?
ハイパワーなプーマ STのライバルとしてはアウディ SQ2(AUDI SQ2)とフォルクスワーゲン RロックR(Volkswagen T-Roc R)が挙げられます。いずれも300psと40.8kgmを発揮する2.0Lの直列4気筒ガソリンターボエンジンを搭載、駆動方式は4WDで7段のデュアルクラッチトランスミッションです。一方のプーマSTは最高出力200psの前輪駆動で留まり絶対的な動力性能こそ及びませんが、6MTとの組み合わせも相まって古き良きホットハッチ的なドライビングが楽しめます。
ST-Lineやタイタニアムなどプレミアム志向に絞ったという点では、同様の上級グレード専用モデルであるDS DS3クロスバックはその特異性に関して似た存在かもしれません。
なお3ペダルのスポーツモデルとしてはフォード フィエスタSTとの比較も実は悩ましいところかもしれません。フィエスタSTは低重心なハンドリングマシンで運動性能は当然こちらが有利ですが、同じ200PSながらプーマSTはフィエスタSTを上回るトルクを低回転寄りで発揮。カタログスペックは近いのですが、棲み分けを行ったフォードの戦略は絶妙ですね。
フォード プーマを日本で乗る場合のおすすめグレード
フォードは2016年に日本市場から撤退してしまいました。日本市場ではメジャーな存在にはなれなかったフォードですが、その魅力から撤退後も並行輸入でフォードを購入するファンは少なくありません。プーマも並行輸入を行えば日本で乗ることが可能です。
おすすめのグレードとして、まずはもっともスポーティーなSTを真っ先に挙げましょう。この純度の高いスポーツモデルの存在は同クラスのクロスオーバーSUVと比較してももちろん、より大型のクロスオーバーSUV、あるいは同クラスの他の車体形状のモデルと比較しても、2020年現在は得難い存在となりました。3ペダルMTの組み合わせに問題がなければ最初に検討するべきです。
もちろんST以外のモデルでも、その特別感は変わりません。普段遣いの燃費などの経済性ではSTに比べて優れており、一方でプレミアムモデルとしての満足感は十分に得られるでしょう。ただしハイブリッドモデル、またディーゼルモデルは本体価格が上がることに加え、日本に輸入し基準に適合させるための手間が増えてしまうため、やや割高となります。ですから燃費の良さだけを理由にしたハイブリッドやディーゼルの選択についてはあまりおすすめできません。
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