キャンプや車中泊などのブームにより日本でも盛り上がりを見せているキャンピングカーですが、欧州では昔からバカンスを楽しむために多くのキャンピングカーが市場にラインナップされてきました。そのなかでも老舗ビルダーが手掛けた人気の一台がフルモデルチェンジで大きくバージョンアップしました。
今回はフォードのメーカー純正キャンピングカー「トランジット・カスタム ナゲット(FORD Transit Custom Nugget)を解説。概要・スペック・価格・並行輸入で乗るための情報を解説します。
フォード トランジット・カスタム ナゲットとは
トランジット・カスタム ナゲットはフォードの全長5mクラスの中型LCV「トランジット・カスタム」をベースに架装されたキャンピングカーです。正式なボディサイズは現時点(2024年2月現在)では発表されておりませんが標準ホイールベースのL1ボディをベースに架装されているため、全高以外はベースのトランジット・カスタムに準じたサイズとなると予想されます。国産車ではトヨタ ハイエースのスーパーロングベースのキャンピングカーよりも少しコンパクトなサイズ感だと思われます。
トランジット・カスタム ナゲットを含むトランジットをベースにしたキャンピングカーは以前からドイツでは販売されており、トランジットの高い堅牢性とウェストファリアが架装したキャンパー装備の使い勝手のよさから長年現地で支持を得てきました。2019年にデビューした先代モデルでは初めて英国市場でも展開され、左右ハンドル両方とも選べるようになりました。
2023年にはベースモデルのトランジット・カスタムがフルモデルチェンジされました。フォルクスワーゲンと商用車開発の提携により、次期トランスポーターとも共有する言われる新プラットフォームの採用や新世代ディーゼルユニットの採用など各所が大幅にアップデートされました。同年これをベースにしたキャンピングカーである新型トランジット・カスタム ナゲットが発表され、2024年に販売およびデリバリー開始の予定です。
今回も先代モデル同様、キャンピングカー化にあたり設計および架装をウェストファリアが担当しています。新型モデルも一見、乗用仕様のトルネオ・カスタムがベースのように見えますが、従来モデル同様トランジットブランドで販売されます。これはキャンピングカー架装による重量増に耐えられることや、欧州LCVの老舗として長年培ってきた大きなネームバリューがあるため、敢えて選択しているとも考えられます。
日本市場にはフォードがインポーター事業を終了しているのに加えて、LCVモデルをラインナップしていなかったため、トランジット・カスタム ナゲットが日本に正規導入されていた実績はありません。
フォード トランジット・カスタム ナゲット 紹介動画(約1分10秒)
ココがスゴイ!フォード トランジット・カスタム ナゲット
フォード トランジット・カスタム ナゲットを語るうえで外せないポイントが以下の5つです。
- 最新プラットフォームを採用したベース車にアップデート
- 老舗ビルダーのウェストファリアが手掛けるメーカー純正キャンピングカー
- 一体型ルーフベッド付きポップアップルーフを装備
- 5人の乗車、4人の就寝が可能
- メーカー純正のため欧州フォードのディーラー網で購入・メンテナンス可能
スタイリングとインテリア
- 表現力豊かな造形のエクステリアを継承してキャンピングカー化
- ポップアップルーフにはソーラーパネルも配置可能
- デジタル面が大きくアップデート
- 人間工学に基づいて設計されたシートも設定
エクステリアはメーカーがベース車を「彫刻的」と例えるシャープにエッジの立った造形を継承し違和感なくキャンピングカー化されています。エクステリアでいちばんの違いはポップアップルーフです。大人二人が就寝可能なベッドスペースをもち、充電用のソーラーパネルも配置できるこのルーフは、新たに折り畳みしやすい素材を採用することでスムーズなルーフ開閉が可能になりました。設置されるルーフベッドのサイズなどについてはキャンパー装備の項目をご参照ください。ほかにもサイドにはビルダーであるウェストファリアのロゴが入った巻き上げ式のオーニングなどが装備されます。リアドアは助手席側の片側が標準となりオプションで両側スライドドアも選択可能です。
インテリアは商用モデルを想像するトランジットよりも、乗用仕様のトルネオ・カスタムに近い質感高いものに仕上がっています。ベース車と同様にフルモデルチェンジで大きく進化した点のひとつがデジタル面ですが、インテリアで目を引くフルデジタルメーターと13インチの大画面タッチスクリーンが標準装備となります。これに組み合わされるインフォテインメントシステムには最新のFORD SYNC4システムが採用され、AppleCarPlay/AndroidAutoのワイヤレス接続にも対応しています。
シート配列はフロント2名+リア3名の5人乗りとなります。フロントはヒーター付きの回転可能な運転席/助手席キャプテンシートが装備され、一部シートパッケージでは人間工学に基いて開発しAGR(ドイツ脊椎健康推進協会品質認定)によって認定されたフォードエルゴノミックシートが設定されています。リアシートはライバル車のなかにはサイドにキッチンを配置するために2人掛けとなるモデルもありますが、ナゲットはキッチンをリアに配置することで3人掛けのシートを実現しています。合わせてリアもヒーター付きシートが選択可能です。
快適な車中泊を実現するキャンパー装備
トランジット・カスタム ナゲットには長年の知見をもつ老舗ビルダーのウェストファリアが設計したキャンパーアイテムが装備されています。
ナゲットの大きなポイントは居住/睡眠/調理のゾーンが独立されていることです。キッチンはベッドを使用したまま室内側に移動することが可能であることなど、これは従来モデルから継承する美点です。
室内側の装備には、作り付けのリビング用折り畳み式テーブルや簡単に開閉できプライバシーを守る遮光ブラインドをはじめ、スマートフォンなどを充電できるUSB Type-Cソケットおよびワイヤレス充電パッドや、今回のモデルチェンジで初採用されたタッチスクリーン・コントロール・モジュールはリビング空間に設置された専用7インチタッチスクリーンを通してバッテリーレベル/傾斜/タンク水位などの情報表示に加えてLEDアンビエントライティングの色調や暖房のコントロールも可能です。
さらに屋外で使えるキャンプチェア2脚とキャンプ用テーブルがテールゲートとスライドドアにそれぞれ収納されています。
就寝スペースは、室内側に1,200mm×1,900mmのベッドに加えて、ポップアップルーフ側にはさらに大きい1,250mm×2,050mmのルーフベッドが装備されており合わせて大人4人が就寝可能です。
水回り関連は、車体後部に2口コンロとシンクを内蔵したキッチンと、後端には屋外シャワーが設置されています。キッチンはL字型を採用することで最適化された調理スペースを確保されているのに加えて、新設計のマットレスを採用したことでルーフベッドを使用した状態でも頭上空間が確保されています。シャワーは温水ボイラーを装備しているためシンクと共に温水が使えるのがポイントです。これはキャンプ以外にもサーフィンなどのマリンスポーツを楽しんだあとにも活躍してくれそうです。
搭載されるエンジンと燃費
パワーユニットは、ディーゼルのみの設定。
- ディーゼル
2.0L 直4ターボ EcoBlue 170PS(125kw)/-Nm
今回のフルモデルチェンジでは最新世代の2.0L直4 EcoBlueディーゼルユニットが採用されました。ベース車には複数のチューニングがありますが、ナゲットには最強となる170PS仕様のみが設定されます。燃費性能は8AT仕様の欧州複合で11.2km/Lです。
現時点(2024年2月現在)ではディーゼルユニットから販売開始されていますが、ガソリンエンジンに電気モーターを組み合わせたPHEV仕様が今後追加予定と言われています。
駆動方式はFFで、トランミッションは6MTのほか従来モデルから多段化された高効率の8速ATも選択可能です。
サイズとスペック
●寸法・重量
【全長×全幅×全高】-×-×- mm(ミラー部分を含む)
【ホイールベース】-mm 【トレッド】前/後:- / -mm
【車両重量】 -kg
●エンジン
【構成】水冷直列4気筒ターボ DOHC16V フロント横置き
【総排気量】1,996cc 【直径×内径】 -×-mm 【圧縮比】-:1
【最高出力】170ps(125kw)/-rpm 【最大トルク】390Nm/-rpm
【燃料容量】55L
●駆動系
【駆動方式】FF 【トランスミッション】8AT
【サスペンション】(前)- / (後)-
【ブレーキ】(前)- / (後)-
【タイヤ】(前後)-
●パフォーマンス
【最高速度】-km/h 【0-100km/h加速】-秒
【燃費】約11.2km/L(新欧州複合基準)【価格】欧州仕様 2024モデル:€76,517
歴史とトリビア
フォード トランジット・カスタム ナゲット関連の歴史とトリビアを簡単にご紹介します。
- 右ハンドル英国仕様は先代モデルで初めて追加
- 乗用メインでもトランジットブランドで販売
- 先代モデルにあった固定式ハイルーフのナゲットプラスの設定はなし(2024年2月現在)
- 右ハンドル英国仕様も間もなく発売予定(2024年2月現在)
- ベース車同様今後PHEV仕様も追加予定
ライバル
欧州市場では長年根強いニーズのあるキャンピングカーですが、トランジット・カスタム ナゲットのライバルとして、同じくウェストファリアが手掛けるメルセデス・ベンツ Vクラス マルコポーロや、新たに市場に参入した日産 プリマスター・シーサイドのほか、ウィズトレーディングでも多くの取り扱い実績があるフォルクスワーゲン T6.1カリフォルニアの後継モデルもデビューを控えており今後も市場は熱い戦いとなりそうです。
- メルセデスベンツ Vクラス マルコポーロ
- 日産 プリマスター・シーサイド
- ルノー トラフィック・スペースノマド
- フォルクスワーゲン 次期カリフォルニア(未発表)
並行輸入するなら。オススメのグレードと価格情報
欧州で支持を得ているトランジット・カスタム ナゲットですが、フォードが日本のインポーター事業から撤退した現在、新たに正規で導入される可能性は残念ながら低いと予想されます。そのため、確実に手に入れるなら並行輸入がおすすめです。トランジット・カスタム ナゲットのグレード構成は以下の通り基本的にモノグレードです。現在左ハンドル欧州仕様のみ詳細が発表されており、右ハンドル英国仕様については追って発売予定とアナウンスされています。
グレード構成(左ハンドル欧州仕様)
- TITANIUM
17インチアルミホイール、ボディ同色ポップアップルーフ、LEDヘッドライト、フルデジタルメーター、13インチタッチスクリーン+FORD SYNC4システム(AppleCarPlay/AndroidAutoワイヤレス接続対応)、フロント/リアパークパイロットシステム、フローリングフロア、ルーフベッド、ベッドに変化する3人掛けリアシート、パーキングヒーター、取り外し可能なポッドマット(鍋敷き)付き2口コンロ&シンク、引き出し式冷蔵庫(33L)、屋外シャワー付き温水ボイラー、タッチスクリーン・コントロール・モジュール、折りたたみ式インナーテーブル、収納式キャンプチェア(2脚)、屋外キャンプ用テーブルなどが装備
新型トランジット・カスタム ナゲットはトランスミッションの選択以外はTITANIUMのモノグレードになりますが、ここでは新採用の8AT仕様をオススメします。オートマチック限定免許のユーザーでも運転可能なのに加えて、多段化により滑らかな変速が可能な8AT仕様は、進化した新型モデルを最も味わえるチョイスです。欧州LCVの代名詞とも言われるタフなトランジットブランドのLCVをベースに、長年欧州でキャンピングカーを架装してきたウェストファリアの知見を存分に活かしたキャンピングカーをフォードのディーラー網で購入やサポートが受けられることはナゲットの大きな魅力です。さまざまな場所やシチュエーションで活躍してくれそうなこの一台を頼れる旅の相棒として欧州からお取り寄せしてみませんか。
- フォード トランジット・カスタム ナゲット 320L1 FWD Titanium 2.0 EcoBlue 170PS 8AT(左ハンドル欧州仕様)
- フォード トランジット・カスタム ナゲット 320L1 FWD Titanium 2.0 EcoBlue 170PS 6MT(左ハンドル欧州仕様)
ほかにもベース車のトランジット・カスタムおよび乗用仕様のトルネオ・カスタムも並行輸入可能です。トルネオ・カスタムについては別途解説記事がありますのでご参照ください。
(€1=152円時・現地値引き交渉前)
(現地値引き交渉前価格:€76,517)\14,450,000
(現地値引き交渉前価格:€72,709)\13,797,000
掲載価格について(為替差益、現地ディスカウント還元!)
※ウィズトレーディングでは参考乗り出し価格例として新車、中古車は掲載時の為替レートで表記しておりますが、お見積り等はご依頼時点の為替レートを適用、差益分があれば還元させていただきます。
また、欧州各国の仕入れ先はディーラーとの価格交渉も頑張っております。これらのディスカウントも当然、皆様へのご提案価格へ反映させていただきます。
現地との綿密な相談による「正確さと速さ」をモットーにしています
海外では仕様・オプション等の位置づけが日本の慣習と異なることも多く、並行輸入では注意が必要です。新車・中古車共にご納得のできる仕様を確実にご納車出来るように、時差を考慮しつつ、仕入れ先とは何度も仕様確認や質問事項をやり取りしており、正確さと速さをモットーに務めております。