MAZDA MX-5は日本ではマツダ ロードスターとして知られるライトウェイトオープンスポーツの欧州仕様です。日本でもロードスターですが、欧州仕様には日本では選べないエンジンと車体バリエーションの組み合わせが設定されています。
今回はその中から、軽量なソフトトップ仕様(MX-5 Roadster)にハイパワーな184psの2.0Lエンジンと6MTの組み合わせをピックアップ。概要・スペック・価格・並行輸入で日本で乗るための情報を解説します。
MAZDA MX-5とは
1989年の発売以来人気を集め、2人乗りの小型スポーツカーとしては世界でもっとも売れた車種としてギネスブックにも掲載されているMX-5/ロードスター。北米ではミアータ(Miata)というペットネームでも知られています。1990年代にはポルシェ ボクスター、メルセデス・ベンツ SLK、BMW Z3などの多くのフォロワーを生み出しました。
NA型と呼ばれる初代、そのスキンチェンジモデルである2代目のNB型(1998年)は、敢えて実用車由来のパワーの低いエンジンを完全に専用設計された車体と組み合わせ、動力性能よりも運動性能を重視していたことが特徴でした。これはイギリスの伝統的なライトウェイトスポーツカーの文法を踏襲するものです。
続く3代目のNC型(2005年)は当時のマツダの経営状況から高出力のスポーツカーであるRX-8と設計の一部が共通化、従来よりシャシーの限界性能が上がりました。とくに日本仕様では従来より高出力なエンジンを組み合わせたためロードスターらしくないとの批判も受けましたが、そのパフォーマンスの高さは一定の評価を受けました。
現行となる4代目のND型(2015年)はNC比で車体を小さく軽量化、さらに1.5Lのエンジンを主軸に据えるというダウンサイズを敢行し「NAの再来だ」と話題になりました。最軽量な仕様では1トンを下回る重量と性能を使い切れるエンジンの組み合わせの絶妙さは特筆されるものがあります。
もっともND型は旧モデルのコンセプトをそのまま現代にリバイバルしたわけではありません。たとえばNA〜NC型でみられた直進安定性を犠牲にしても旋回性向上に振ったかのような性格は少し穏やかになり、21世紀のスポーツカーとして全方面へのバランスも重視されています。そんなND型だから長距離高速移動でもっと余裕が欲しい、サーキットでタイムを削りたいなど、モアパワーを求める方も少なくありません。その希望を満たすのが今回ご案内するソフトトップと2.0Lのエンジンの組み合わせです。
2.0L ソフトトップ仕様について
元々NDロードスターは1.5Lを前提に開発されていましたが、北米の販売現場からより高出力なエンジンの要望があり開発末期に2.0Lの設定が追加されたと言われています。結果、仕向地毎の車体形状とエンジンの組み合わせは下記のようになりました。
車体仕様 | 日本 | 欧州 | 北米 |
---|---|---|---|
ソフトトップ | 1.5 L | 1.5 L / 2.0 L | 2.0 L |
RF | 2.0 L | 1.5 L / 2.0 L | 2.0 L |
日本市場では2017年に追加されたRF(リトラクタブル・ファストバック)ではじめて2.0Lが投入されましたが、ソフトトップへの設定は見送られました。当時2.0Lのエンジンはレブリミットが6,800rpmと低くとどまっていました。マツダは軽量なソフトトップの車体には7,500rpmまで回せる1.5Lの方が相性が良いので2.0Lを設定する予定はないと明言していたのです。
しかし2018年に2.0Lエンジンはリファイン、出力とトルクが向上し、レブリミットも7500rpmに上がりました。そのため国内でも新生2.0Lとソフトトップの組み合わせを希望する声は一層大きくなり、また兄弟車のアバルト124の生産も終了したからか、マツダも以前とは異なり日本仕様でも「ソフトトップに2.0Lを設定することを検討はしている」と公に表明するようになりました。ただし実現には時間がかかる見込みで、加えてND型のモデルライフの残り期間も長くはないため、どのくらいの台数が販売できるかは未知数です。そのため、より早く、あるいは確実に2.0Lのソフトトップを手に入れる方法として、エンジンスワップや欧米からの並行輸入などの選択肢にも注目が集まるようになってきています。
今回ご紹介するのはドイツ仕様とイギリス仕様のMX-5の2.0L仕様です。2023年秋に予定されているマイナーチェンジに伴い新車の発注ができなくなりましたが、マイナーチェンジ前のモデルが新古車や低走行中古車が流通するようになりました。
ココがスゴイ!MAZDA MX-5
MAZDA MX-5 2.0Lを語るうえで外せないポイントが以下の3つです。
- 184ps/205Nm、最高出力は歴代ロードスターで最高
- 重量は1,025kgと軽量
- ロードスターらしさは失わない
スタイリングとインテリア
- Exclusive-line、HOMURAの上級2グレードとの組み合わせで販売
- ドイツ仕様では特別仕様車のKIZUNA、KAZARIとの組み合わせも設定
- 日本仕様とは異なる
MX-5のエクステリアは日本仕様のロードスターと大きな違いはありません。2010年代以降のマツダで採用されている魂動デザインと呼ばれる造形は空力やパッケージングに基づいた機能性に裏付けされたもので普遍性を持ち、デビューからの時間の経過を感じさせません。
【ソフトトップバリエーション】
MX-5の欧州仕様ではグレードによって以下のようなソフトトップのバリエーションが組み合わせられていました。
- Exclusive-line / HOMURA
ソフトトップはブラックです。HOMURAではドアミラーもピアノブラックとなります。 - KAZARI(ドイツ仕様)
ソフトトップはダークブラウンで、日本仕様では2022年11月から2023年6月まで短期間限定販売されたBrown TOPと同等です。 - KIZUNA(ドイツ仕様)
ソフトトップはダークブルーで、日本仕様では2021年12月から2022年5月まで短期間限定販売されたNavy Top、または2023年6月まで限定販売された990Sと同等です。
インテリアは、人間中心を謳うマツダのコンセプトに倣ったもので、左右ハンドルを問わずマツダの考える理想的なドライビングポジションが実現しています。イギリス仕様の場合はメーターにマイル表示が加わります。
【シートバリエーション】
MX-5の2.0L仕様では、グレードによって以下のようなシートのバリエーションが組み合わせられていました。
- Exclusive-line(イギリス仕様 / ドイツ仕様)
シートはブラックの本革で、日本仕様のロードスターではS Leather Packageと同等の内装です。 - KAZARI(ドイツ仕様)
シートはテラコッタ(うすレンガ色)の本革で、日本仕様では2022年11月から2023年6月まで短期間限定販売されたBrown TOPと同等の内装です。 - HOMURA(イギリス仕様) / KIZUNA(ドイツ仕様)
シートはホワイトの本革で、日本仕様では2020年12月から2023年6月まで選択可能だったWhite Selectionと同等の内装です。 - HOMURA(ドイツ仕様)
レカロのセミバケットシートが装備されます。日本仕様のRSに近いのですが、ステッチはレッドに代わってシルバーとなります。
搭載されるエンジンと燃費
- ガソリン
2.0L 直4自然吸気 SKYACTIV-G 184PS/205Nm
この解説のハイライトとなるエンジンはPE-VPR型が採用されています。これはマツダの新設計思想「スカイアクティブ」を同社のガソリンエンジンとしては最初にフルスペックで採用したもので2011年に登場しました。直噴を採用し燃焼効率向上のため13.0という高圧縮比を達成、その実現のための4-2-1の排気管などが特徴です。
もっともこのエンジンは、先代NCロードスターで採用されていたMZRエンジンと呼ばれるLF-VE型と比べるとロングストロークとなっており、当初はレブリミットは6,800rpmに制限されており、出力も先代よりも控えめ、これがマツダが日本仕様でソフトトップに2.0Lの採用を見送った一因でした。
しかしマツダは2018年の改良ではシリンダーヘッド、ピストン、コンロッドなどの回転系部品を刷新、さらに吸排気系も見直し、出力とトルクを向上させながらレブリミットを7,500rpmに引き上げています。184psに達した最高出力はかつて限定発売されたロードスター・ターボ、あるいは派生車種だったアバルト124を超え、歴代のロードスターで最強となりました。
マツダ内製の6MTはNB(アイシン製)、NCに(マツダ内製)に設定されていたクロスレシオの6MTではなく、NA〜NCまでの伝統のマツダ内製5MTにクルージングギアを足したようなギア比となっています。トルクが潤沢な2.0Lエンジンとの相性は良く、100km/hまでは6.5秒で加速し、最高速度は219km/hに達します。
足回り
MX-5/ロードスターは初代NA型以来伝統の4輪独立懸架サスペンションが採用され、また先代NC型に引き続きフロントはダブル・ウィッシュボーン、リアは5リンクマルチリンクが採用されています。コンパクトな直列4気筒を縦置きして後輪を駆動するレイアウトはサスペンションの設計の余裕を生み、路面追従性の高さはストラットを採用するライバル勢と比べても定評があります。
1.5Lではグレードによって採用の有無が異なるリアサスペンションのスタビライザーは2.0Lではすべてのグレードで搭載されており、フロントストラットブレースで車体が強化されています。リアデフにはLSDが採用され、HOMURAではダンパーもビルシュタイン製となります。
ブレーキは日本仕様の1.5LではNR-AやRSと組み合わされるフロント15インチ径のものとなり、さらにHOMURAではフロントに赤いキャリパーのブレンボ製ブレーキが採用されています。
ホイールは全仕様で17インチが標準となり、またHOMURAではBBS製が標準となります。
サイズとスペック
【全長×全幅×全高】3,915×1,735×1,225 mm(ミラー部分を含まず)
【ホイールベース】2,310mm 【トレッド】前/後:1,495 / 1,505mm
【車両重量】 1,022kg
●エンジン
【構成】水冷直列4気筒自然吸気 DOHC16V フロント横置き
【総排気量】1,998cc 【直径×内径】 83.5×91.2mm 【圧縮比】13:1
【最高出力】184ps(135kw)/7,000rpm 【最大トルク】205Nm/4,000rpm
【燃料容量】45L
●駆動系
【駆動方式】RR 【トランスミッション】6MT
【サスペンション】(前)ダブルウィッシュボーン / (後)マルチリンク(5リンク)
【ブレーキ】(前)ベンチレーテッドディスク / (後)ディスク
【タイヤ】(前後)205/45R17
●パフォーマンス
【最高速度】219km/h 【0-100km/h加速】6.5秒
【燃費】約14.5km/L(新欧州複合基準)【価格】欧州仕様 2023モデル:€35,690(オプションなし・新車時販売価格)
歴史とトリビア
MAZDA MX-5/ロードスター関連の歴史とトリビアを簡単にご紹介します。
- NB型の末期、172ps/209Nmのターボが350台で限定販売されました
- NB型の末期、固定屋根のロードスタークーペが限定発売されましたが予定販売台数を下回りました。この中にはオートバックスから販売されたmono CRAFT mm1も含まれます
- NC型の欧州仕様のメインストリームは126ps/167Nmの1.8Lでした
ライバル
1990年代当時、MX-5/ロードスターのフォロワーとしてデビューしたモデルは多くありましたが、後継モデルが途絶えたものも多く、生き残ったモデルもプレミアム路線を歩むようになり、立ち位置を大きくは変えないロードスターとは直接競合しなくなっていきました。
しかし動力性能の高い2.0Lエンジン搭載モデルでは加速力や最高速度で、それらのプレミアムモデルの一部とも比肩するようになっています。もっとも軽量さこそがロードスターの強みです。カタログスペックでわずか1,022kgという車重は加速力や最高速が同等以上のライバルよりも中高速のワインディングで優位に立てることもあるでしょう。ただし車体が大きなライバルよりも荷室容量は少ないので長い旅行時はパッキングなどに工夫は求められます。
- GR86/BRZ
- スープラSZ
- Z4 sDrive 20i
- 718ボクスター
並行輸入するなら。オススメのグレードと価格情報
MX-5欧州仕様のグレード構成について紹介します。
グレード構成(イギリス仕様)
- EXCLUSIVE-LINE
リアビューモニター、自動防眩ミラー、BOSEサウンドシウテム(9スピーカー)、Apple CarPlay/Android Auto、クルーズコントロール(リミッター機能付き)、ヒルスタートアシスト、運転支援装置(車線逸脱警告・衝突防止自動ブレーキ) - HOMURA
(EXCLUSIVE-LINEに加えて)BBS製ホイール、ピアノブラックドアミラー、ブレンボ製ブレーキ、MX-5ロゴ入りステンレススカッフプレート
なおドイツ仕様車も概ね同様ですが一部の運転支援装置と日本のマツダコネクトに相当するディスプレイオーディオはメーカーオプション扱いとなっていました。もっともこれらの装備の装着率は高かったようです。またKAZARI、KIZUNAではこれらのオプションが標準装備化されています。
おすすめはEXCLUSIVE-LINEですが、ドイツ仕様では中古車市場に流通量の多いKAZARIもおすすめです。
- MAZDA MX-5 Roadster SKYACTIV-G184 EXCLUSIVE-LINE 6MT(左ハンドル欧州仕様)
- MAZDA MX-5 Roadster SKYACTIV-G184 KAZARI 6MT(左ハンドル欧州仕様)
- MAZDA MX-5 Roadster SKYACTIV-G184 EXCLUSIVE-LINE 6MT(右ハンドルイギリス仕様)
そのほかのグレードについてもご希望の場合はお問い合せいただければお探しできますが、残念ながら2024年モデルへのマイナーチェンジに際して従来仕様の発注が終了しています。仕様によっては探すのが難しい場合がございます。ご了承ください。
- MAZDA MX-5 Roadster SKYACTIV-G184 EXCLUSIVE-LINE 6MT(左ハンドル欧州仕様)
(現地値引き交渉前価格:€35,690)
- MAZDA MX-5 Roadster SKYACTIV-G184 KAZARI 6MT(左ハンドル欧州仕様)
(現地値引き交渉前価格:€37,190)
(現地値引き交渉前価格:£30,410)
掲載価格について(為替差益、現地ディスカウント還元!)
※ウィズトレーディングでは参考乗り出し価格例として新車、中古車は掲載時の為替レートで表記しておりますが、お見積り等はご依頼時点の為替レートを適用、差益分があれば還元させていただきます。
また、欧州各国の仕入れ先はディーラーとの価格交渉も頑張っております。これらのディスカウントも当然、皆様へのご提案価格へ反映させていただきます。
現地との綿密な相談による「正確さと速さ」をモットーにしています
海外では仕様・オプション等の位置づけが日本の慣習と異なることも多く、並行輸入では注意が必要です。新車・中古車共にご納得のできる仕様を確実にご納車出来るように、時差を考慮しつつ、仕入れ先とは何度も仕様確認や質問事項をやり取りしており、正確さと速さをモットーに務めております。