長年、欧州のエントリーモデルとして愛されてきたフィエスタや、ゴルフと並び欧州Cセグメントのスタンダードとも言えるフォーカスの生産終了を相次いで発表したフォードですが、これらの決断に現地では惜しむ声が多く聞かれているようです。しかし、今後は次世代EVへのシフトを掲げている一方、まだ内燃機関モデルの灯が消えたわけではありません。フィエスタの新車生産が終わったいま、新たに意外なモデルが内燃機関仕様を用意してデビューし、エントリーモデルを担うことになりました。
今回はフルモデルチェンジしたフォードの小型MPV「新型トルネオ・クーリエ(FORD Tourneo Courier)」のガソリン仕様を中心に解説。概要・スペック・価格・並行輸入で乗るための情報を解説します。
フォード トルネオ・クーリエとは
トルネオ・クーリエはフォードの小型LCVをベースにしたMPVモデルです。ボディサイズは全長:4,340mm×全幅:1,876mm×全高:1,817mm(ミラー折り畳み時)と、全幅以外は国産車ではトヨタ シエンタやホンダ フリードに近く、国産5ナンバーフルサイズミニバンより一回り近く小さなサイズとなります。
トルネオ・クーリエの初代モデルは、2013年のジュネーブモーターショーで公開され、2014年に市販版がデビューしました。かつてフィエスタをベースに車体後部を荷室にしたフルゴネット型の「フォード クーリエ」があり、これの実質的な後継車種になりますが、2002年にクーリエが生産終了してから初代モデルのデビューまで10年以上のブランクがありました。初代モデルもクーリエ同様、フィエスタをベースにしていますが、ボディはフルゴネット型ではなくAピラーから荷室部分まで連続的にルーフが続くワンモーションフォルムになりました。貨物用途のバン仕様は「トランジット・クーリエ」、乗用用途のMPV仕様は「トルネオ・クーリエ」として展開され、フォードのLCVベースのMPVでは、トルネオ・カスタム、トルネオ・コネクトと共にトルネオ三兄弟では最もコンパクトで末っ子的な存在です。2019年にはエクステリアの一部やインパネデザイン、インフォテインメントシステムなどがアップデートされるマイナーチェンジが行われています。
現在販売されているのは2代目モデルで、2023年にデビューしました。2代目も初代同様、バン仕様はトランジット・クーリエ、MPV仕様はトルネオ・クーリエとして展開されています。このフルモデルチェンジでは従来モデルのようにLCVを乗用車向けに仕立てるだけでなく、SUVのクロスオーバー要素を取り込んだことが大きなトピックで、プラットフォームもフィエスタからSUVのプーマと共用するものに変更されています。デビューと前後するタイミングでフィエスタが生産終了したことで、今後はプーマと共にトルネオ・クーリエがフォードのエントリーモデルの役割を担うことになりました。今回フルモデルチェンジした新型モデルに対してメーカーは「SUVにインスパイアされた便利で実用的な一台」とコメントしています。
生産は担当するフォード・オトサンの新たに拠点となったルーマニア・クラヨーヴァの工場で行われます。近年フォードはVWと商用車開発で提携していますが、トルネオ・カスタム(次期トランスポーター)、トルネオ・コネクト(キャディ)のようにトルネオ・クーリエのVW版は現時点ではなく、フォード単独開発のプロダクトではないかと現地メディアは報じています。これとは別に同車初のBEVとなる「E-トルネオ・クーリエ」も発表されましたが、ガソリン仕様から1年遅れて発売予定とアナウンスされています。
トルネオ・クーリエは日本市場に、前任モデルのクーリエ時代も含めて正規導入された実績はありません。
フォード トルネオ・クーリエ紹介動画(約1分10秒)
ココがスゴイ!フォード トルネオ・クーリエ
フォード トルネオ・クーリエを語るうえで外せないポイントが以下の5つです。
- SUVのクロスオーバー要素を取り込んでフルモデルチェンジ
- プラットフォームもSUVモデルと共有
- LCV譲りの高い機能性とタフさ
- フォードの最新インフォテインメントシステムを採用
- モデル初のBEV仕様も設定(2024年発売予定)
スタイリングとインテリア
- ギア感を感じるエクステリアデザイン
- クロスオーバー要素を盛り込みつつも上位モデルのデザイン要素を継承
- ユーザーの声をフィードバックしたインテリア
- 従来モデルから大きくデジタル化
エクステリアで目を引くのは、メーカーが「SUVをインスパイアした」とコメントしているデザインです。曲面を多用したワンモーションフォルムの従来モデルから一変、高いボンネットに短いオーバーハングをはじめ、低められたルーフラインとブラックアウトされた各ピラーなど、同社のブロンコを彷彿するようなデザイン処理は、アウトドアでも役立ちそうなギア感が高いものに仕上がっています。その一方、各所を見てみると、フロントグリル一体型のヘッドライトや、直線的なバックドア回りの処理などは、兄貴分となる上位モデルのトルネオ・コネクトの要素もうまく継承していることに気付かされます。リアドアは両側スライドドアが設定され、バックドアは乗用仕様となるトルネオ・コネクトは跳ね上げ式となります。
今回のフルモデルチェンジではSUVのクロスオーバー要素が取り込まれましたが、さらなる武骨さを希望されるユーザーにはフェンダーアーチに組み込まれるブラックアウトされた専用パーツなどが用意されるActive仕様も新たに設定されています。
今回のフルモデルチェンジでは「フローティング・パネル・デザイン」と呼ばれるインストルメントパネルが採用されました。水平方向に向かってメーターパネルとタッチスクリーンを中心に、エアコンの吹き出し口や各種操作部をシンプルに効率的に配置することで、高い視認性と確実なコントロールができる環境を実現しています。これに加えて大きく整理がしやすい収納を求めるユーザーの声をフィードバックし、運転席回りをはじめ、ラゲッジには汚れたものなどをそのまま入れられるなど、さまざまなアイテムを整理/収納できる便利なスペースが車内各所に用意されたほか、60:40で分割可倒のリアシートを畳むことで長尺物や大きなアイテムも積み込めるラゲッジは、従来モデルと比べて最大で44%以上拡大されています。
インフォテインメントシステムをはじめ、デジタル面も今回大きくアップデートされました。「デジボード(Digiboard)」と名付けられた12インチの大画面フルデジタルメーターを同車で初採用したほか、8インチタッチスクリーンと組み合わされるシステムは最新のFORD SYNC4が採用されており、AppleCarPlay/AndroidAutoを使用したワイヤレススマートフォン接続も使用可能です。
搭載されるエンジンと燃費
パワーユニットは、ガソリンとBEVの設定です。
- ガソリン
1.0L 直3ターボ EcoBoost 125PS(92kw)/200Nm
設定されるガソリンユニットは、3気筒1.0Lターボ EcoBoostの1種類です。フィエスタをはじめ多くのモデルで採用されるダウンサイジングターボユニットで、軽やかな回転感覚と優れた環境性能を実現し、エンジン・オブ・ザ・イヤーの1L以下部門を複数年受賞した実績のあるフォードの自信作です。トルネオ・クーリエにはこのユニットに対してエネルギー効率を最適化するためにオート・スタート・ストップと冷間時に効果を発揮するアクティブ・グリル・シャッターが装備されています。燃費性能は欧州複合で14.7km/Lです。
これに加えて2024年にはBEV仕様のE-トルネオ・クーリエが発売開始予定とアナウンスされています。
駆動方式はFFで、トランスミッションは6MTと2ペダルデュアルクラッチトランスミッションの7速PowerShiftが選択可能です。
走行性能とハンドリング
現時点(2023年11月)で新型トルネオ・クーリエのサスペンション形式はメーカーから正式に公開されておりませんが、プラットフォームを共有するプーマと同じ形式ではないかと予想されます。今回のフルモデルチェンジでSUVモデルとプラットフォームを共有したことで、乗用用途としてオンロードでは快適に、路面状況の悪いオフロードでは安定した走りが提供されることが走行性能のポイントとして挙げられそうです。
運転支援機能については、車線維持支援機能付きクルーズコントロールや、リアパークパイロットシステムなどを含んだ運転支援パッケージが仕様によって設定されています。
サイズとスペック
●寸法・重量
【全長×全幅×全高】4,340×1,876×1,817 mm(ミラー折り畳み時)
【ホイールベース】-mm 【トレッド】前/後:- / -mm
【車両重量】 1,373kg
●エンジン
【構成】水冷直列3気筒ターボ DOHC12V フロント横置き
【総排気量】999cc 【直径×内径】 -×-mm 【圧縮比】-:1
【最高出力】125ps(92kw)/-rpm 【最大トルク】200Nm/-rpm
【燃料容量】-L
●駆動系
【駆動方式】FF 【トランスミッション】6MT
【サスペンション】(前)- / (後)-
【ブレーキ】(前)- / (後)-
【タイヤ】(前後)195/65R15
●パフォーマンス
【最高速度】-km/h 【0-100km/h加速】-秒
【燃費】約14.7km/L(新欧州複合基準)【価格】欧州仕様 2023モデル:€25,450
歴史とトリビア
フォード トルネオ・クーリエ関連の歴史とトリビアを簡単にご紹介します。
- 小型LCVのトランジット・クーリエベースのMPV
- 乗用仕様はトルネオブランドで販売
- フィエスタのフルゴネット版となる「クーリエ」の実質後継モデル
- 初代モデルは10年近く販売
- 内燃機関仕様から販売開始
ライバル
欧州小型LCVをベースにしたMPVは多くのモデルがラインナップされていますが、日本でも人気のカングーをはじめ、Cセグメント級のプラットフォームをベースにしたモデルが中心です。トルネオ・クーリエのようにBセグメント級のプラットフォームをベースにしたモデルは、以前フィアット クーボ/シトロエン ネモ・マルチスペース/プジョー ビッパー・ティーピーの三兄弟がありましたが、どれも現在は販売終了しています。唯一クーボのバン仕様であるフィアット フィオリーノに乗用寄りのコンビ仕様が一部仕向け地に残るぐらいで、事実上欧州ではライバル不在と言えそうです。
- フィアット フィオリーノ・コンビ
- フィアット クーボ(絶版)
- シトロエン ネモ・マルチスペース(絶版)
- プジョー ビッパー・ティーピー(絶版)
並行輸入するなら。オススメのグレードと価格情報
国産コンパクトミニバン並みのボディサイズのMPVとなる新型トルネオ・クーリエですが、フォードが日本のインポーター事業から撤退した現在、新たに正規で導入される可能性は残念ながら低いと予想されます。そのため、確実に手に入れるなら引き続き並行輸入がおすすめです。トルネオ・クーリエのグレード構成は以下の通りです。現在左ハンドル欧州仕様および右ハンドル英国仕様共に設定されています。
グレード構成(左ハンドル欧州仕様)
- Trend
15インチスチールホイール+フルホイールキャップ、ヒーテッド電動調整ドアミラー、前席パワーウィンドウ(運転席側ワンタッチ)、8インチタッチスクリーン+FORD SYNC4システム+ワイヤレス接続対応AppleCarPlay/AndroidAuto、プリクラッシュアシスト、パークパイロットシステム(リア)、キーレスエントリーなどが装備 - Titanium
(Trendに対して)16インチアルミホイール、ヒーテッド電動調整ドアミラー(ブラック塗装)、シルバールーフレール、ヘッドライトおよびグリルのクローム装飾、全席パワーウィンドウ(運転席/助手席ワンタッチ)、オートエアコンなどが装備 - Active
(Trendに対して)17インチブラックアルミホイール、ヒーテッド電動調整ドアミラー(ブラック塗装)、シルバールーフレール、Active専用エクステリアパーツ(フェンダー部のブラックパーツおよびエンブレム、ブラックの専用グリルなど)、フロント/リアアンダープロテクション、全席パワーウィンドウ(運転席/助手席ワンタッチ)、パークパイロットシステム(フロント/リア)などが装備
グレード構成(右ハンドル英国仕様)
- Titanium
16インチアルミホイール、ヒーテッド電動調整ドアミラー(ブラック塗装)、シルバールーフレール、クイッククリア・ヒーテッドフロントガラス、運転席シートヒーター、全席パワーウィンドウ(運転席/助手席ワンタッチ)、オートエアコン、8インチタッチスクリーン+FORD SYNC4システム、ウィンターパック2、フロントパーキングエイド、クルーズコントロール、キーレススタートなどが装備 - Active
17インチブラックアルミホイール、ヒーテッド電動調整ドアミラー(ブラック塗装)、シルバールーフレール、Active専用エクステリアパーツ(フェンダー部のブラックパーツおよびエンブレム、ブラックの専用グリルなど)、全席パワーウィンドウ(運転席/助手席ワンタッチ)、ドライバーアシスタントパック、車線維持アシスト、アダプティブクルーズコントロール、デジタルリアビューカメラなどが装備
新型トルネオ・クーリエのオススメは、左ハンドル欧州仕様のTRENDグレードに1.0L EcoBoostと6MTの組み合わせです。TRENDはベーシックな仕様ですが、スマートフォンとのワイヤレス接続に対応したFORD SYNC4システムやリアパークパイロットシステムなどをはじめ標準装備が充実しており、合わせて内燃機関のフィーリングを積極的に楽しめる6MTの選択は、オンロード/オフロード問わず運転を楽しめ、さまざまなレジャーシーンで活躍しそうな新型トルネオ・クーリエをリーズナブルに味わえるチョイスです。オートマチック限定の方なら2ペダルのPowerShiftとの組み合わせも可能です。SUVの武骨さとLCVのタフで使い勝手の良さの両方を小さなボディで叶えた、アウトドア志向のライフスタイルを彩る一台をいち早くお取り寄せしてみませんか
- フォード トルネオ・クーリエ Trend 1.0 Ecoboost 6MT(左ハンドル欧州仕様)
- フォード トルネオ・クーリエ Titanium 1.0 Ecoboost PowerShift(右ハンドル英国仕様)
合わせてお仕事の相棒としてバン仕様をご希望の方にはトランジット・クーリエや、より大きいボディサイズをご希望なら兄貴分となるトルネオ・コネクトやトルネオ・カスタムも並行輸入可能ですので合わせてお問合せください。
(€1=150/£1=175円時・現地値引き交渉前)
(現地値引き交渉前価格:€25,450)\5,483,000
(現地値引き交渉前価格:£27,065)\6,484,000
掲載価格について(為替差益、現地ディスカウント還元!)
※ウィズトレーディングでは参考乗り出し価格例として新車、中古車は掲載時の為替レートで表記しておりますが、お見積り等はご依頼時点の為替レートを適用、差益分があれば還元させていただきます。
また、欧州各国の仕入れ先はディーラーとの価格交渉も頑張っております。これらのディスカウントも当然、皆様へのご提案価格へ反映させていただきます。
現地との綿密な相談による「正確さと速さ」をモットーにしています
海外では仕様・オプション等の位置づけが日本の慣習と異なることも多く、並行輸入では注意が必要です。新車・中古車共にご納得のできる仕様を確実にご納車出来るように、時差を考慮しつつ、仕入れ先とは何度も仕様確認や質問事項をやり取りしており、正確さと速さをモットーに務めております。