絶対的なベンチマークとして君臨し続けるフォルクスワーゲン ゴルフを筆頭に強豪がひしめく欧州Cセグメントクラス。そのなかにあって「スタンダード カンパニーカー」として独自のポジションを築いてきたのがオペル/ボクスホール アストラ(OPEL/VAUXHALL Astra)です。かつては日本でも正規導入され一時は人気を博しながらも忘れ去られ、今またPSAグループとの統合の渦中で、オペル/ボクスホールとしての血脈を残す最後のフェイスリフトが行われました。今回はオペル/ボクスホール アストラを解説。日本未導入Cセグメントの概要・スペック・価格・並行輸入で乗るための情報をご紹介します。
※ボクスホールはオペル車の英国向け販売ブランドです。
オペル/ボクスホール アストラとは
オペル/ボクスホール アストラは同社の主力Cセグメントモデル。現在販売されているのは6代目モデル(アストラK)で2015年のフランクフルトモーターショーでデビューしました。2019年にはフェイスリフトが行われ、内外装の手直しとパワーユニットを環境性能が高いものに一新しています。
アストラKのテーマは「ダウンサイジング」。シボレーの電動化モデルのボルト等と共有する新世代の軽量プラットフォームGM D2XXを採用。従来モデルと比べてボディサイズもパワーユニットも小型化することで、大幅に軽量化されています。
ボディサイズは5ドアハッチバックで全長:4,370mm×全幅:1,809mm×全高:1,485mmと、国産車のマツダ 3やカローラスポーツよりも若干小さめなサイズになっています。
ボディタイプは5ドアハッチバックとワゴンのスポーツツアラーの2種類がラインナップされます。
ココがスゴイ!オペル/ボクスホール アストラ
オペル/ボクスホールアストラを語るうえで外せないポイントが以下の5つです。
- 空力性能に優れた流麗なボディ、ワゴンボディも健在
- 高強度スチール採用で剛性感を保ちつつ軽量化
- 全て直列3気筒のダウンサイジングエンジンに刷新
- 新開発のCVT、9速オートマチックを初採用
- 英国ではCセグメントのスタンダードカンパニーカー
オペル アストラ CM動画(約30秒)
スタイリングとインテリア
- 流麗な曲線を組み合わせた有機的なデザイン
- 空力性能を追求して環境性能も向上
- より質感が高くなったインテリア
- ボディサイズは小さくなっても室内空間が拡大
ボディタイプは5ドアハッチバックと、ワゴンの2種類。デザインは初代インシグニアのデビュー以降、デザインコンシャスにシフトしつつあるオペル/ボクスホールの方向性を継承しています。ダウンサイジングしつつも、流麗な曲線を巧みに組み合わせたグラマラスなボディラインや、サイドを引き立てるプレスラインが有機的な魅力を感じます。精悍な印象のヘッドライトは一部グレードにIntelliLuxと呼ばれるクラス初のLEDマトリクスライトが採用されています。
新型アストラのもうひとつのトピックが空力性能の向上です。Cd値は0.26(5ドアハッチバック)とクラスの中でも優秀な数値です。ボディラインは空力性能を考慮しているのに加え、「Active Fullface Shutter」と呼ばれるラジエターグリルは、自動で開閉することで空気の流れを整え、空力性能を向上させるだけでなく、冷間時にエンジンのウォームアップ時間を短縮できるため、燃費性能の向上にも寄与しています。
インテリアもエクステリア同様、曲面を巧みに組み合わせたインパネデザインで、ソフトパッドの多用とピアノブラック塗装のパネル等により質感が高いものに仕上がっています。以前、旧型モデルで大幅に質感が上がったと言われましたが、それをさらに上回っているとの評判です。
室内空間はボディサイズが小さくなってもしっかりと拡大されており、ラゲッジスペースは5ドアハッチバックで最大1,210L。ライバルが多い欧州Cセグメントクラスのライバルと比較しても優秀です。
インフォテインメントシステムは大画面のタッチスクリーンを中心としたもの。スマホ等との連携にももちろん対応しています。旧型のアストラやインシグニアはボタンが多く煩雑な操作系統でしたが、整頓された使いやすいものに改善されました。オプションでワイヤレス充電機能やハイエンドBOSEサウンドシステムも提出されます。
なお、安全装備は新世代車両ということもあり、SRi以上のグレードでは緊急自動ブレーキ等が標準装備されます。
空力性能に優れたワゴンモデル、スポーツツアラー
ワゴンボディのスポーツツアラーはより流麗なスタイリングを追求し、5ドアハッチバックよりも一層空力性能を向上(Cd値は0.25)させています。最高速度や静寂性、燃費の面でも効果があるでしょう。
ボディサイズは全長4702mm、全幅1809mm、全高1510mm、ホイールベース2662mm。荷室容量は1,630Lの大容量となり、ハンズフリー電動テールゲートなど便利な機能も持ち合わせています。
搭載されるエンジンと燃費
搭載されるエンジンはガソリンが2機種4仕様、ディーゼル1機種2仕様。
- ガソリン
1.2L 直3直噴ターボ 110PS(81kw)/195Nm
1.2L 直3直噴ターボ 130PS(96kw)/225Nm
1.2L 直3直噴ターボ 145PS(107kw)/225Nm
1.4L 直3直噴ターボ 145PS(107kw)/236Nm(CVT) - ディーゼル(可変タービンの電動式ターボ)
1.5L 直3ターボ 105PS(77kw)/260Nm
1.5L 直3ターボ 122PS(90kw)/285Nm(9AT)/300Nm(6MT)
2019年のフェイスリフトでパワーユニットを一新、直4 1.4~1.6Lが中心のラインナップから全てのエンジンが直3のダウンサイジングターボになりました。これはCO2排出量の削減と燃費性能の向上がフェイスリフトの重要な目的であったことに起因します。
駆動方式はFF、トランスミッションはMTは全て6速、2ペダル仕様は、ガソリンの1.4LにCVT、ディーゼルには1.5Lの122PS仕様に9速ATが組み合わされます。
これらの新エンジン群とミッションにより、環境性能は大幅に向上したとメーカーでは謳っています。燃費性能(WLTP複合基準)はガソリン1.2L 6MTで17.8-18.8km/L、ハイパワーな1.4L CVTで16.0-17.8km/L、ディーゼルはAdBlueとの組み合わせでよりクリーンな排気ガスになり、105ps/6MTで22.2-23.2km/Lをマークします。CO2排出量も大幅に削減されています。
走行性能とハンドリング
サスペンションは、フロント:マクファーソンストラット、リア:トーションビームを採用。Cセグメントクラスでは一般的な組み合わせです。従来モデルのOPC/VXRのような尖ったものはなく、一見面白みに欠けるように見えるかも知れませんが、軽量化は走りにも好影響を与え、従来モデルよりもハンドリングはより軽快で自然な味付けに仕上がっているようです。
かつてからオペル/ボクスホールが得意とする質実剛健、実用重視のコンセプトはカンパニーカーとしてより最良なものに進化しています。
サイズとスペック
【全長×全幅×全高】4,370×1,809×1,485 mm
【ホイールベース】2,662mm 【トレッド】前/後:1,548 / 1,565mm
【車両重量】約1280kg
●エンジン
【構成】水冷直列3気筒直噴ターボ DOHC12V フロント横置
【総排気量】1,342cc 【直径×内径】79.0×91.2mm 【圧縮比】10.0:1
【最高出力】145ps(107kw)/5000-6000rpm 【最大トルク】236Nm/1500-3500rpm
【燃料容量】48L
●駆動系
【駆動方式】FF 【トランスミッション】7Step CVT
【サスペンション】(前)マクファーソンストラット / (後)トーションビーム
【ブレーキ】(前)ベンチレーテッドディスク / (後)ディスク
【タイヤ】(前後)225/45R17
●パフォーマンス
【最高速度】210km/h 【0-100km/h加速】9.9秒
【燃費】約16.0-17.8km/L(WLTP複合基準)
【価格】英国仕様 2019モデル:£25,635
歴史とトリビア
アストラ関連の歴史とトリビアを簡単にご紹介します。
オペルとしてのアストラは初代モデルが1991デビューしたアストラF型とされていますが、右ハンドル圏のボクスホールでは、これ以前に前任モデルにあたるカデットD型(1979年デビュー)の時点でいち早く「アストラ」の名前が付けられていました。そのため、英国の文献では「アストラ40年の歴史」というフレーズを目にしますが、これが理由です。
日本ではオペルブランドで初代モデルとなるアストラFから日本市場撤退直前の3代目まで販売されていました。一時はベストセラーのゴルフに迫る勢いがあり、特にアストラワゴンは当時のゴルフにワゴンモデルがまだ無かったことから、人気を得て一斉を風靡しました。また2代目、3代目モデルで名門カロッツェリア「ピニンファリーナ」が手掛けたカブリオレも導入されました。
- 英国では累計300万台、欧州全体では2400万台以上販売されたベストセラー
- 英国ではCセグメントのスタンダードカンパニーカー、販売台数の大半を占める
- オーストラリアではホールデン、中国ではビュイックブランドで販売
- 従来モデルには高性能仕様のアストラOPC(オペル)/VXR(ボクスホール)も設定
- モデルコード(F~K)は前任であるカデットから通しとなっている
- 日本市場でもオペルブランドで3代目まで販売、特にワゴンモデルは一斉を風靡
ライバル
Cセグメントと言えば、このクラスのベンチマークとも言われるフォルクスワーゲン ゴルフをはじめ、欧州内外の各メーカーが力を込めたモデルを投入する最もアツい市場と言えるでしょう。アストラの立ち位置は絶対的安定感のゴルフと動的パフォーマンスのフォーカスの中間的な存在といえるかもしれません。
- フォード フォーカス
- フォルクスワーゲン ゴルフ
- セアト レオン
- プジョー 308
- トヨタ カローラ
- マツダ 3
- ヒュンダイ i30
並行輸入するなら。オススメのグレードと価格情報
10年以上前にオペルが日本市場から撤退して以降、オペル/ボクスホールのモデルが正規で導入された実績はありません。PSA傘下となったこともあり日本市場に再上陸する可能性は非常に低いと思われます。そのため、アストラを手に入れるには並行輸入が最も確実な方法です。
英国仕様となるボクスホール アストラのグレード構成はトリムやナビゲーションの有無によって7種類が設定されています。
- ベーシックグレードの「SE」
- カンパニーカー用途でも活躍するナビ付きの「Business Edition Nav」
- タッチスクリーンディスプレイやLEDデイタイムライトが付いた充実装備の「SRi」
- SRiグレードにナビを装備した「SRi Nav」
- 専用スポイラーやレザーハンドルなどスポーティな装いの「SRi VX-Line Nav」
- IntelliLux LEDマトリクスライトや、BOSEプレミアムサウンド・システムなどを装備した上級モデルの「Elite Nav」
- 8インチ大画面タッチスクリーンやワイヤレスチャージャーなどが追加される最上級モデルの「Ultimate Nav」
オススメは安全装備が標準化される「SRi」以上のグレードです。「SRi」と最上級の「Ultimete Nav」の価格例をご提示しておきます。
- ボクスホール アストラ 5Dr 1.4 145PS Ultimete Nav CVT
- ボクスホール アストラ 5Dr 1.2 110PS SRi 6MT
アストラは尖ったスペックはないかも知れませんが、クセのない自然な乗り味で誰もが運転しやすく、フリートユースもこなせるオールマイティな一台。例るなら「非凡なる平凡」もしくは「偉大なる中庸」などのフレーズが合いそうです。
アストラが立たされる環境も日々変化しています。オペル/ボクスホールがPSAグループ入りして以降、新型モデルはPSA色が濃くなっています。次期モデルはプジョー308の兄弟車になることが予想されます。従来のGM系オペル/ボクスホールの要素が残ったアストラを手に入れるなら最後のチャンスになるでしょう。
MT仕様や他のグレード、ワゴンボディのスポーツツアラー、左ハンドルのオペル車も並行輸入できますので、お気軽にお問い合わせください。
(£1=135円時・値引き交渉前価格)
(値引き交渉前現地価格:£26,775)\5,110,000
(値引き交渉前現地価格:£21,895)\4,384,000
ディーゼル車をご希望の方へ
参考乗出し価格が掲載されていない場合には、別途お見積りいたしますのでお問合せ下さい。
なお、ディーゼル車を取り巻く環境は年々厳しくなっています。ディーゼルエンジン搭載車をご希望の場合には以下の記事もご覧ください。
掲載価格について(為替差益、現地ディスカウント還元!)
※ウィズトレーディングでは参考乗り出し価格例として新車、中古車は掲載時の為替レートで表記しておりますが、お見積り等はご依頼時点の為替レートを適用、差益分があれば還元させていただきます。
また、欧州各国の仕入れ先はディーラーとの価格交渉も頑張っております。これらのディスカウントも当然、皆様へのご提案価格へ反映させていただきます。
現地との綿密な相談による「正確さと速さ」をモットーにしています
海外では仕様・オプション等の位置づけが日本の慣習と異なることも多く、並行輸入では注意が必要です。新車・中古車共にご納得のできる仕様を確実にご納車出来るように、時差を考慮しつつ、仕入れ先とは何度も仕様確認や質問事項をやり取りしており、正確さと速さをモットーに務めております。