車中泊ブームから最近は日本でも盛り上がりを見せつつあるキャンピングカー。欧州では以前からバカンスの友として市民権を得ているジャンルです。そのなかでもキング・オブ・ユーロキャンパーとして君臨するフォルクスワーゲン T6.1 カリフォルニアに対して「真っ向から対峙できる」と感じるモデルが、新たに英国でも手に入れられるようになりました。今回はフォードのLCV(小型商用車)ベースのユーロキャンパー「トランジット・カスタム ナゲット」を解説。概要・スペック・価格・並行輸入で乗るための情報をご紹介します。
※画像は左ハンドルの欧州仕様車(2019)です。右ハンドルの英国仕様車(2020)とは異なる場合があります。※2021年為替変更価格
フォード トランジット・カスタム ナゲットとは
フォード トランジット・カスタム ナゲットは、同社の全長5mクラスとなるLCVベースのキャンパーモデルです。ポップアップルーフをもつ「ナゲット」と、ロングボディ&ハイルーフの「ナゲットプラス」の2種類があります。ボディサイズはベースとなったトランジットカスタムが、全長約5m×全幅約2mのクラスのため、国産車ではトヨタ ハイエースのワイドボディ(スーパーロング)や、近々登場すると言われるグランエースのキャンパー仕様よりも短く、5mに収まる全長は魅力的。これは普段使いのコインパーキング探しや、フェリーを使った旅でも有利。キャンパーとしても使いやすいサイズと言えるでしょう。
トランジット カスタムには、乗用バージョンとなるトルネオ・カスタムがありますが、これを選ばなかったのは、ヘビーデューティーな用途に応えられるようトランジットは設計されているため、キャンパー架装のための重量増に耐えられることや、欧州LCVの老舗として長年培ってきた大きなネームバリューがあるため、敢えて選択したことも考えられます。
キャンパー架装はフォード自身ではなく、こちらも老舗キャンパービルダーであるウェストファリアが行います。これはまさに老舗と老舗の組み合わせ。外部コーチビルダーが架装を行いますが、ナゲットは他のフォード車と同様、フォードディーラーにて購入およびアフターサービスが可能です。
フォード トランジット・カスタム ナゲットは、以前からドイツで販売されており、ベースモデルの素性のよさと、使い勝手のよいキャンパー装備から大きな支持を得ていましたが、2019年にベースモデルのトランジット・カスタムがフェイスリフトされたタイミングで、英国をはじめ複数の国で販売開始され、待望の右ハンドル仕様も選べるようになりました。
フォード トランジット・カスタム ナゲット コンセプト動画(約1分20秒)
ココがスゴイ!フォード トランジット・カスタム ナゲット
フォード トランジット・カスタム ナゲットを語るうえで外せないポイントが以下の5つです。
- ヘビーデューティーな用途にも応えるトランジット カスタムがベース
- 老舗コーチビルダー「ウェストファリア」が架装
- 大型ダブルベッドが2基、ライバルをよく研究した各種キャンパー装備
- モバイルオフィスとしても活躍してくれそうな各種装備
- このクラスで水洗トイレ/洗面台を装備(ナゲットプラス)
スタイリングとインテリア
- 選べる2種類のボディタイプ
- ベース車のフェイスリフトに伴いより精悍な印象に
- 乗車定員はライバルよりも多い5人、就寝定員は4人
- 居住スペースと水回りを前後できっちりと棲み分け
ボディタイプは2種類。ノーマルホイールベースにウェストファリアが得意とするポップアップルーフを装備したナゲット(L1)と、367mm長いロングホイールベースに独立した2階部分を拡張したハイルーフを組み合わせたナゲットプラス(L2)がラインナップされています。
ライバルとなる他の欧州5m級LCVと比べて短めのノーズにスクエアなボディ形状はキャンパーにした際、室内空間のゆとりに直結しています。2019年のフェイスリフトでは、LEDデイタイムランニングライトなどを新たに採用し、より精悍な雰囲気に進化しました。
インテリアはベースモデルの使い勝手のよさはそのままに、キャンパーとして便利な装備が架装されています。掃除がしやすく、温かみを演出するフローリング仕上げや充実したキッチン。簡単にダブルベッドに様変わりするリアベンチシートは3人掛けで乗車定員は5人とライバルと比べて多くなっています。
インフォテインメントや各種安全装備もフェイスリフトを機に新しいものに切り替えられました。
ライバルをよく研究した充実のキャンパー装備
ナゲットには多くのキャンパーアイテムが標準で装備されます。キャンパー架装では老舗となるウェストファリアが手掛けるだけあり、これらはライバルモデルをよく研究した結果と言えるでしょう。
ナゲットの特徴(ナゲットプラス共通仕様)
- 就寝定員は4名、2階部分も快適に就寝可能
就寝スペースは大型のダブルベッドが2つ。1階側はリアベンチシートを倒し簡単に二人が快適な就寝可能なダブルベッドに変形可能。ポップアップルーフによる2階部分も二人が快適に就寝できるベッドスペースが確保されます。特に固定式ハイルーフのナゲットプラスは、このクラスでは抜きん出た室内空間を提供します。2階部分に上がるハシゴは収納可能です。 - 乗員がリラックスできるリビング空間
前席は回転対座機能付きで折り畳み可能なリビングテーブルも装備し、乗員全員が寛げるリビング空間を提供します。 - 居住区間と水回りがしっかり棲み分け
フロント側の居住スペースに対して、水回りはリア側としっかりと棲み分けされています。リア側に配置されたL時型のキッチンは、ニッケルクローム鋼を採用した本格的なもの。二口のガスコンロをはじめ、40Lの冷蔵庫と、42Lの水タンクは、屋外のシャワーへも提供されます。居住スペースと棲み分けがされているため、ベッドを展開した状態でもシンクが使用可能なのが優位点です。 - 駐車時の利便性も考慮
寒冷時の駐車時にも使用できる補助暖房をはじめ、外部電源端子(230-240V)や、補充をより簡単に使用可能な外部給水口も装備しています。 - ノマドワーキングにも適しているかも知れません
その他注目のアイテムとして、WIFIルーターを装備。車内だけでなく屋外15mまで受信可能になっており、インドアでもアウトドアでもパソコンを開けばどこでもオフィスとしてノマドワーキングの要望にも答えてくれそうです(WIFIルーターは法規の関係で日本では使用できない可能性があります)
ナゲット プラス(左ハンドル欧州仕様車)の特徴
ロングボディ&ハイルーフ化により余裕の室内空間を確保したナゲットプラス。キッチンユニットや1階部分のベッド等は基本的にナゲットと同じですが、以下の点が大きく異なる部分です。
- 車内を快適に移動できる圧倒的な頭上空間
拡張されたルーフ部の採用で、室内空間は170cm級の高さが確保されています。車内の移動、キッチンの使用、テーブルを展開したリビングとしての利用時も快適な空間を提供します。 - より快適な上段ダブルベッド
上段のダブルベッドは特殊スプリングと厚手のマットレスを採用しており、ナゲットよりもさらに快適な仕様になっています。また、ハイルーフ化により、ベッド部の上部空間も十分に確保され、就寝時の圧迫感もありません。静寂性や全天候性の点でも優れています。 - 独立したトイレと洗面台を装備
リア後端に独立したトイレスペースが確保されています。電気式の水洗トイレと、折りたたみ式の洗面台を装備。トイレ使用時にはカーテンやシェードで目隠しは可能ですが完全個室にはなりません。とはいえ、夜間や緊急時に使用できる、という安心感は絶大です。 - 収納スペースが多数追加されています
ロングホイールベース車がベースのハイルーフ化により、トイレユニットの周辺にも多数の扉付き収納庫が追加されています。奥行や深さのあるものも多く使い勝手の良いものです。
もはやプライベートモーターホーム。近日登場、ビッグナゲット?
2019年秋、フォードより新たなナゲットが発表されました。L3H3シャシーを用い、新しいコンセプトで架装された「ビッグナゲット」です。就寝定員は2名ながら最早、プライベートモーターホームといった様相です。架装はウェストファリアが担当しています。
- 2m級の高さを持つ圧倒的な室内空間
- 給湯機能付き、独立したシャワールーム(トイレ付、給排水タンクは各々100L)
- 簡易キッチンは70L冷蔵庫と2口ガスコンロ付き
- 高品質の大型ダブルベッド
エンジンは105PSと185PSの2.0L EcoBlueターボディーゼルを搭載。発売は2020年前半とされ、価格は未発表です。まずはドイツ(欧州仕様、左ハンドル)からの発売が予想されます。
搭載されるエンジンと燃費
搭載されるエンジンは2.0Lディーゼルのみの設定。
- ディーゼル
2.0L 直4 ターボディーゼル TDCi EcoBlue 105PS(77KW) Nugget
2.0L 直4 ターボディーゼル TDCi EcoBlue 130PS(96KW) Nugget/Nugget Plus
2.0L 直4 ターボディーゼル TDCi EcoBlue 185PS(136KW) Nugget/Nugget Plus
ベース車のフェイスリフトで全て2.0LのEcoBlueにアップデートされました。これはフォードの最新ディーゼルユニットで、AdBlue(尿素SCR)採用によるEuro6D-Tempクリアの排気ガス性能向上と低燃性能の向上を実現しています。フェイスリフト前モデルよりパワーアップした185PSユニットはトルクも十分。キャンパー架装で重量が増したナゲットでもグイグイと引っ張っていきます。
駆動方式はFF。トランスミッションは6速MTを中心に、130PS仕様と185PS仕様に6速ATを設定。SelectShiftと呼ばれるこのオートマチックは、シフトノブ横に備えられたボタンでマニュアル操作ができるのに加え、滑りやすい路面や急坂などではロックアップする機能も持ち合わせています。
走行性能とハンドリング
サスペンションはフロント:ストラット、リア:リジットを設定。ヘビーデューティーな用途にも応えるトランジット譲りのこの足回りは、キャンパー架装によって増加したナゲットの車重をしっかり受け止めてくれます。
安全装備はインテリジェントスピードアシスト、レーンキープアラート、歩行者検知式ブレーキアシストなどを装備しています。アダプティブクルーズコントロールも秀逸です。
サイズとスペック
【全長×全幅×全高】4,972×1,986×2,060 mm
【ホイールベース】2,933mm 【トレッド】前/後:- / -mm
【車両重量】2,550-2,890kg
●エンジン
【構成】水冷直列4気筒ターボディーゼル DOHC16V フロント横置
【総排気量】1996cc 【直径×内径】84.0×90.0mm 【圧縮比】16.5:1
【最高出力】185ps(136kw)/-rpm 【最大トルク】-Nm/-rpm
【燃料容量】-L
●駆動系
【駆動方式】FF 【トランスミッション】6AT
【サスペンション】(前)ストラット / (後)リジット
【ブレーキ】(前)ベンチレーテッドディスク / (後)ディスク
【タイヤ】(前後)215/65R16
●パフォーマンス
【最高速度】-km/h 【0-100km/h加速】-秒
【燃費】約-km/L(新欧州複合基準)
【価格】英国仕様 2020モデル:£58,199
歴史とトリビア
ドイツ以外の仕向地ではフォードディーラーでの展開が始まったばかりのナゲットですが、ウェストファリアが架装するトランジットの歴史は古く、遡ると初代モデルのトランジットMk.1の次点でウェストファリア製キャンパーは存在します。「Transit Westfalia Wannse」と名付けられたこのキャンパーは、ハイルーフ化された姿が印象的。この次点で既にナゲットプラスの基本形は完成されていたと言えるでしょう。その後もウェストファリアはトランジット・カスタム以外にも、トランジットファミリーのモデルをベースにキャンパー架装したモデルをリリースし続けています。
ライバル
キング・オブ・ユーロキャンパーとも言えるフォルクスワーゲン T6.1 カリフォルニアがコンセプトも近く、最大のライバルと言えます。かつてはウェストファリアが架装していたVWトランスポーターですが、現在はVWの自社架装。ウェストファリアにとっても好敵手と言えるでしょう。
他には同じウェストファリアが架装するメルセデス・ベンツ Vクラスベースのマルコポーロなどが欧州ではライバルとされています。日本において国産車でライバルになりそうなのは、トヨタ ハイエースのワイド&ロングモデルをベースとしたキャンパーか、今後発売予定として展示会などでも出展されたグランエースベースのキャンパーが近い存在です。
- フォルクスワーゲン T6.1カリフォルニア
- メルセデス・ベンツ Vクラス ウェストファリア マルコポーロ
- トヨタ グランエースベースのキャンパー(今後販売予定)
並行輸入するなら。オススメのグレードと価格情報
ベース車となるトランジット カスタムを含めてフォードのLCVが日本市場に正規導入された実績がないのに加え、フォード自体が既に日本市場から撤退しているため、ナゲットの導入および再上陸の可能性は残念ながらほとんどないといえます。手に入れるためには並行輸入が確実な方法です。
グレード構成は前述のようにミディアムホイールベースにポップアップルーフを組み合わせた「ナゲット」と、ロングホイールベースにハイルーフを組み合わせ、よりキャンパー装備を充実させた「ナゲットプラス」の2種類が設定されています。
- ナゲット(L1)
電動ポップアップルーフ、ダブルベッドに変形するリアベンチシート、L字型シンクなどをはじめとするキャンパーアイテムが装備 - ナゲットプラス(L2、欧州仕様左ハンドル)
ナゲットに対してロングホイールベース、2階部分を拡張したハイルーフ、独立した電動水洗トイレ、折りたたみ可能な洗面台などが装備
そのなかでもオススメは、標準ホイールベースにポップアップルーフを組み合わせたナゲットに、2.0L EcoBlueの185PS仕様とオートマチックの6速SelectShiftの組み合わせ。これは日本で乗るのにはナゲットプラスよりも扱いやすいサイズに、最もハイパワーなユニットと、運転がしやすい2ペダルトランスミッションの組み合わせです。
前述の通り、欧州キャンパーといえばフォルクスワーゲン T6.1 カリフォルニアを思い浮かべるユーザーが多いかもしれません。しかし、信頼性と耐久性では右に出るものはいないトランジットファミリーに、長年多くの実績を持つウェストファリアのキャンパー架装。まさに「LCV」と「キャンパー」、それぞれの「老舗×老舗」のシナジー効果が感じられるこの一台。
これを選択したオーナーに対してナゲットはきっと高い満足度を与えてくれる一台だと思われます。タフで快適なナゲットをお供に、思うまま自由に旅をしてみるのはいかがでしょうか?
- フォード トランジット・カスタム ナゲット L1 2.0L EcoBlue 185PS 6AT
- フォード トランジット・カスタム ナゲット プラスL2 2.0L EcoBlue 185PS 6AT
ほかにも、さらに快適なキャンパー性能を追求される方にはナゲットプラスを、そして運転を楽しみたい方は6MTや燃費よい105/130PS仕様も並行輸入できますので、お気軽にお問い合わせください。
合わせて、キャンパー装備のない乗用ワゴンがご希望の方は、トルネオカスタムも並行輸入できますので、合わせて以下のページも御覧ください。
(£1=150円、1€=130円時・値引き交渉前価格)
(英国仕様右ハンドル、値引き交渉前現地価格:£62,736)\11,950,000
(独国仕様左ハンドル、・値引き交渉前現地価格:€59,736)\10,134,000
ディーゼル車をご希望の方へ
参考乗出し価格が掲載されていない場合には、別途お見積りいたしますのでお問合せ下さい。
なお、ディーゼル車を取り巻く環境は年々厳しくなっています。ディーゼルエンジン搭載車をご希望の場合には以下の記事もご覧ください。
掲載価格について(為替差益、現地ディスカウント還元!)
※ウィズトレーディングでは参考乗り出し価格例として新車、中古車は掲載時の為替レートで表記しておりますが、お見積り等はご依頼時点の為替レートを適用、差益分があれば還元させていただきます。
また、欧州各国の仕入れ先はディーラーとの価格交渉も頑張っております。これらのディスカウントも当然、皆様へのご提案価格へ反映させていただきます。
現地との綿密な相談による「正確さと速さ」をモットーにしています
海外では仕様・オプション等の位置づけが日本の慣習と異なることも多く、並行輸入では注意が必要です。新車・中古車共にご納得のできる仕様を確実にご納車出来るように、時差を考慮しつつ、仕入れ先とは何度も仕様確認や質問事項をやり取りしており、正確さと速さをモットーに務めております。
画像と動画
フォード トランジット・カスタム ナゲットキャンパーコラボレーション動画(約6分10秒)