欧州LCV(ライト・コマーシャル・ヴィークル:商用車)のなかでも最も大きい全長5mを超えるフルサイズクラスは国産車では該当するモデルがなく、日本ではあまり馴染みがないかも知れません。しかし、欧州では街で働く姿を多く見かける生活に密着したジャンルのひとつです。
今回紹介するのは同クラスのなかでも定番車種のひとつ、メルセデス・ベンツ スプリンター(MERCEDES BENZ Sprinter)を解説。日本未導入フルサイズLCVを商用仕様のパネルバンを中心に概要・スペック・価格・並行輸入で乗るための情報を解説します。
メルセデス・ベンツ スプリンターとは
スプリンターは欧州LCVではフルサイズに属するモデルで、ヴィトーやシタンなどメルセデス・ベンツのLCVラインナップでは長男的な存在です。ボディサイズは、最もコンパクトなL1H1仕様で全長:5,267mm×全幅:2,020mm×全高:2,356mm(ミラー部分を含まず)と、国産車ではトヨタ ハイエースのスーパーロングに近い全長ですが、最も大きなL4仕様では全長:7,367mmと非常に大きく、国産車では該当するモデルがありません。
初代モデルのデビューは1995年、かつて日本にも救急車に架装された仕様が一部の自治体で採用されていたこともあるトランスポーター「T1」の後継車種として「スプリンター」の名前でデビューしました。初代モデルと2006年デビューの2代目モデルはフォルクスワーゲンとのジョイントベンチャーで開発され、フォルクスワーゲンブランドでは、初代モデルは「LT」、2代目モデルは「クラフター」の名前で展開されていました。
3代目モデルは2018年にデビューしました。このフルモデルチェンジでは内外装が一新されたほか、初となる電気自動車仕様の「e-スプリンター」が追加されました。現在販売されているモデルは2021年に仕様変更を受けたモデルで、全車最新のパワートレインにアップデートされ、最新の運転支援システムも新たに採用されました。スプリンターは物流をはじめとするプロ仕様のモデルゆえ、商用仕様のパネルバンのほか、送迎用途やミニバス的な使い方が想定されたツアラー、トラック仕様や、各種架装が可能なキャブシャーシ仕様でも販売されます。そのため組み合わせや仕様がとても多く、メーカーは1,000を超えるバリエーションと600ものオプションが設定されているとコメントしています。使い勝手のよさなどから市場からの評価は高く、最近では2021年の「フリート・ニュース・アワード」や「ビジネスバン・アワード」など、信頼性の高いラージサイズバンとしていくつもの賞を受賞しています。
日本市場には初代モデルが「T1N」の名前で一時期インポーターや、建機のコマツが扱っていたことがありました。パネルバン仕様のほか、小型バスが自治体に導入された実績もありましたが、現在は正規で導入されていません。スプリンターの名前を名乗らなかった理由は、恐らく当時の国産車メーカーが同じ名称の乗用車を販売していたため、重複を避けたことが予想されます。
メルセデス・ベンツ スプリンター ヒストリー紹介動画(約2分15秒)
ココがスゴイ!メルセデス・ベンツ スプリンター
メルセデス・ベンツ スプリンターを語るうえで外せないポイントが以下の5つです。
- ニーズに合わせて選べるボディタイプ
- お仕事からバンライフまで使い道多彩な広いカーゴスペース
- 最新世代のディーゼルユニットにアップデート
- 前輪駆動/後輪駆動/AWD全ての駆動方式を設定
- 荷物にやさしいエアサスペンションも選択可能
スタイリングとインテリア
- 4種類の全長と3種類の全高が設定
- メルセデス・ベンツの最新モデルに通じるエクステリアデザイン
- 使い勝手を考え抜かれたモジュラーストレージコンセプト
- 長距離長時間でも疲れづらいAGR基準を満たしたシート
スプリンターのボディタイプは全長は最も短い5,267mmのL1(左ハンドル欧州仕様ではKompakt)から、5,932mmのL2(同Standard)、6,967mmのL3(同Lang)、7,367mmのL4(同ExtraLang)の4種類が設定されており、全高は2,351~2,356mmのH1(同Nomaldach)、2,613~2,785mmのH2(同Hochdach)、2,825~2,995mmのH3(同Superhochdach)の3種類が設定されています。全長と全高の組み合わせは使い方や積載する貨物のサイズや量に合わせて選択でき、最も大きいL4H3仕様では全長7m超えで全高は約3mと国産メーカーのパネルバンにはない堂々とした体躯となります。車体が大きいぶんボディ後半のパネル部分も大きく、お店や会社をアピールする広大なキャンパスとしても使えそうです。
エクステリアデザインはシャープなヘッドライトに存在感のあるフロントグリルなど、メルセデスの最新モデルに通じるものに仕上がっており、メルセデス・ベンツ最大LCVとしての存在感をしっかり感じます。最新モデルではLEDヘッドライトやリアライトを新たに採用したほか、フロントグリルやバンパーなどをボディカラーでペイントされたカラード仕様も選択可能です。
ドアはリアドアが片側スライドドアが標準で、バックドアは欧州LCVとしてスタンダードな観音開きが設定されています。
インテリアは車幅に合わせて水平方向が強調されたインストメントパネルに対して、メルセデス・ベンツのモジュラーストレージコンセプトに則り、各所に多くの収納が用意されています。インストメントパネル左右には書類などが入る蓋つきの収納が用意されるのをはじめ、頭上の収納コンパートメントや、12Vアクセサリーソケット/複数のUSB Type-Cポート/ワイヤレス充電(オプション)を備えたセンターコンソールなど、ドライバーの使い勝手を考えられた設計がされています。
シートは長距離・長時間座り続けるドライバーのために専用のコンフォート・ドライバーシートが設定されています。シートの前後、背もたれの角度、座面の高さ、シートクッションの角度などドライバーの体格に合わせて細かく調整ができるほか、4ウェイランバーサポートを装備した仕様では、AGR(ドイツ脊椎健康推進協会品質認定)の基準を満たします。シートレイアウトはパネルバンの場合、標準ではフロント1列のみで2列目以降はオプションでの選択になります。シート配列は助手席1人掛けの2人乗り仕様が標準ですが、オプションで助手席2人掛けの3人乗り仕様や、折り畳み式の助手席も選択可能です。
インフォテイメントシステムは、スプリンターでは初となるMBUXがオプションで設定されました。最大10.25インチのタッチスクリーンが組み合わされるこのシステムは、AppleCarPlayおよびAndroidAutoのスマートフォン接続に対応しています。
搭載されるエンジンと燃費
パワーユニットは、ディーゼルのみの設定です。
- ディーゼル
2.0L 直4ターボ OM654 114PS(84kw)/-Nm
2.0L 直4ターボ OM654 150PS(110kw)/340Nm
2.0L 直4ターボ OM654 170PS(125kw)/400Nm
2.0L 直4ターボ OM654 190PS(140kw)/450Nm
設定されるのは全て2.0Lのディーゼルとなり、2021年にメルセデス・ベンツの最新世代ディーゼルユニットとなるOM654型にアップデートされました。ミドルクラスLCVのヴィトーや高級MPVのVクラスにも採用されるOM654型ユニットは、アルミニウム製ハウジングの採用のほか、エンジン内摩擦を低減させるNANOSLIDEコーティングや排気ガス再循環および後処理により、従来ユニットよりもダウンサイジングしつつも、低燃費とクリーンな環境性能を実現しています。環境性性能は全ての仕様でEuro-6dをパスし、燃費性能はL2H2ボディと170PS仕様を組み合わせた場合の欧州複合で10.9km/Lです。
駆動方式は前輪駆動、後輪駆動、トルクオンデマンド式のAWDと全ての駆動方式が設定されます。トランスミッションは6速MTを中心に、全ての2ペダルオートマチック仕様に最新世代の9速ATとなる9G-TRONICが設定されます。
積載量と荷室空間
スプリンターの荷室に関するスペックは以下の通りです。同じボディタイプでも各項目のスペックに幅があるのは、駆動方式や車両重量による仕様によって異なるためです。国産モデルのバンと比較しても高い最大積載量と積載空間を備えているため、貨物を運ぶ以外にも、キャンパーや最近人気のバンライフのベースとしても適任と言えるでしょう。
ボディタイプ | L1H1 | L1H2 | L2H1 | L2H2 | L3H2 | L3H3 | L4H2 | L4H3 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
最大荷室長(mm) | 2,710~2,732 | 2,732 | 3,375~3,397 | ← | 4,410 | ← | 4,810 | ← |
最大荷室幅(mm) | 1,787 | ← | ← | ← | ← | ← | ← | ← |
ホイールアーチ間荷室幅(mm) | 1,350~1,412 | 1,412 | 978~1,412 | 718~1,412 | 978~1,350 | ← | ← | ← |
最大積載容量(立方メートル) | 7.5~7.8 | 8.8 | 9.0~9.5 | 10.5~11.0 | 14.0~14.4 | 15.5 | ← | 17.0 |
最大積載量(kg) | 815~1,875 | 979~1,844 | 884~2,679 | 908~2,644 | 970~2,475 | 985~2,472 | 941~2,428 | 938~2,425 |
サイズとスペック
【全長×全幅×全高】5,932×2,020×2,620 mm(ミラー部分を含まず)
【ホイールベース】3,665mm 【トレッド】前/後:1,726 / 1,732mm
【車両重量】 2,284kg
●エンジン
【構成】水冷直列4気筒ターボ DOHC16V フロント縦置き 気筒休止機構付
【総排気量】1,950cc 【直径×内径】 -×-mm 【圧縮比】-:1
【最高出力】170ps(125kw)/-rpm 【最大トルク】400Nm/1,700-2,400rpm
【燃料容量】71L
●駆動系
【駆動方式】FR 【トランスミッション】9AT
【サスペンション】(前)- / (後)-
【ブレーキ】(前)- / (後)-
【タイヤ】(前後)-/-R-
●パフォーマンス
【最高速度】-km/h 【0-100km/h加速】-秒
【燃費】約10.9km/L(新欧州複合基準)【価格】欧州仕様 2022モデル:€63,942(オプションのマニュアルエアコン込み)
歴史とトリビア
メルセデス・ベンツ スプリンター関連の歴史とトリビアを簡単にご紹介します。
- 1,000を超えるバリエーションと600ものオプションが設定
- フルサイズバンとして欧州で多く賞を受賞
- かつては北米市場などダッジブランドなどで販売
- 初代モデルは日本に正規導入されていた実績あり
- 大阪市では初代モデルのバス仕様が導入された実績もあり
ライバル
スプリンターが属する欧州で最も大きいフルサイズLCVのクラスは、メルセデス・ベンツをはじめ馴染みのある乗用車メーカー以外にも、まず日本ではお目にかかれないフォルクスワーゲングループのMANやイヴェコなど欧州商用車専門ブランドもラインナップしています。そのなかでも最も近しいライバルとしてフォード トランジットを挙げます。数あるトランジット兄弟のなかでも最も大きく、スプリンター同様多くのボディタイプと駆動方式が組み合わされるトランジットは、長年欧州で高い支持を得ており、欧州LCVの代名詞とも言えるモデルです。
- フォード トランジット
- フォルクスワーゲン クラフター
- プジョー ボクサー
- ルノー マスター
- フィアット デュカト
- 日産 インタースター
- MAN TGE
- イヴェコ デイリー
並行輸入するなら。オススメのグレードと価格情報
最近では主にキャンパー架装のベースとして、フィアット デュカトが欧州LCVとして久々に日本に正規導入されることが発表されて話題になった一方、スプリンターはかつてT1Nの名前で正規導入されていましたが、現時点(2022年8月現在)では日本市場にメルセデスベンツのLCVは弟分となるヴィトーやシタンなども含めて現在は導入されておりません。日本ではサルーンやSUVなどプレミアムモデルを中心としたラインナップのため、スプリンターが正規で導入される可能性は残念ながら低いと思われます。
これより、確実に手に入れるなら並行輸入がおすすめです。スプリンター・パネルバンのグレード構成は以下の通りです。左ハンドル欧州仕様、右ハンドル英国仕様共に設定されていますが、左ハンドル欧州仕様は基本的にモノグレードで、ボディタイプ/パワーユニット/駆動方式で選択するようになっています。
グレード構成(左ハンドル欧州仕様)
基本的にモノグレードとなり、ボディタイプ/パワーユニット/駆動方式を選択して各種オプションを組み合わせます。
- 16インチスチールホイール、ドライビングライトアシスタント、ヒーター付き電動格納ミラー、助手席アジャスタブルシート、フルサイズパーティション、横風アシスタントなどが装備(エアコンはオプション)
グレード構成(右ハンドル英国仕様)
- PURE
16インチスチールホイール、助手席デュアルシート、マルチファンクションステアリングホイール、断熱ガラス、ヘッドライトアシスト、フルサイズパーティション、樹脂製フロア、アクティブブレーキアシスト、7インチタッチスクリーン(AppleCarPlay/AndroidAuto対応)などが装備(エアコンはオプション) - PROGRESSIVE
(PUREに対して)USB Type-Cポート、チルトおよびテレスコピック対応ステアリング、運転席アームレスト、収納コンパートメント用ヒンジ式リッド、木製フロア
などが装備(エアコンはオプション) - PREMIUM
(PROGRESSIVEに対して)16インチスチールホイール+フルホイールカバー、ボディ同色グリルフレーム、エアコン、専用シートトリム、パーキングパッケージ(リアカメラ、パーキングセンサーなどを含む)などが装備
メルセデス・ベンツLCVのなかでも最大サイズとなるスプリンターですが、そのなかでもおすすめは、左ハンドル欧州仕様のL2H2ボディに、170PSの317CDIと9G-TRONICの組み合わせです。L2H2ボディはかつて正規導入されていた初代モデル(T1N)の標準ボディハイルーフ仕様に近く、室内空間も広いため多くの仕事アイテムや長尺物も積み込むことが可能なほか、317CDI仕様は高い最大積載量を備えます。これは多くの貨物や仕事道具を積み込むお仕事の相棒だけでなく、バイクなどの趣味のアイテムなどのトランスポーターや、バンライフのためにセルフビルドするベースとしても活躍してくれそうなチョイスです。国産バンのワイドボディやスーパーロングを凌駕する積載性を持つ欧州フルサイズLCVは、何を積みどう使うかはユーザー次第。使い方を考えて好みの仕様を本場欧州からお取り寄せしてみませんか。
- メルセデス・ベンツ スプリンター Standard Hochdach 317CDI Hinterradantrieb 9G-TRONIC+マニュアルエアコン(左ハンドル欧州仕様)
- メルセデス・ベンツ スプリンター PROGRESSIVE L1H1 PanelVan 315CDI Front-wheel drive 9G-TRONIC+マニュアルエアコン(右ハンドル英国仕様)
ほかにも右ハンドル英国仕様のほか、日本で乗るのにもう少しコンパクトなL1H1仕様をはじめ、より長く高さのある、L3H3ボディやL4H3ボディ、そして路面状況の悪いところも走るお仕事やアウトドアスポットに赴くのにも活躍してくれそうなAWD仕様など様々な仕様があるスプリンターをニーズに合わせて各種並行輸入可能ですのでお気軽にお問い合わせください。
(€1=135/£1=160円時・現地値引き交渉前)
(現地値引き交渉前価格:€63,942)\11,020,000
(現地値引き交渉前価格:£48,252)\9,950,000
掲載価格について(為替差益、現地ディスカウント還元!)
※ウィズトレーディングでは参考乗り出し価格例として新車、中古車は掲載時の為替レートで表記しておりますが、お見積り等はご依頼時点の為替レートを適用、差益分があれば還元させていただきます。
また、欧州各国の仕入れ先はディーラーとの価格交渉も頑張っております。これらのディスカウントも当然、皆様へのご提案価格へ反映させていただきます。
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