最近では商用車開発の提携により、新型フォルクスワーゲン トランスポーターとベースを共有したことでも話題のフォード トランジット・カスタムですが、一方、今なお従来モデルにあたる初代もお客様からのお問合せが多く、ウィズトレーディングでは輸入実績のある一台です。
今回はフォード トランジット・カスタム(FORD Transit Custom)の初代モデル最終型(2017年~2022年)にフォーカスを当ててプレイバック解説。商用仕様のパネルバンを中心に敢えて従来モデルをオススメする理由をはじめ、概要・スペック・価格・並行輸入で乗るための情報を解説します。
フォード 初代トランジット・カスタムとは
フォード トランジット・カスタムはフォードの全長5mクラスとなるミドルサイズLCVです。全長は初代最終型のL1H1ボディで全長:4,973mm×全幅:1,925mm×全高:1,986 mm(ミラー部分を含まず)と、国産車ではトヨタ ハイエースや、日産 キャラバンの標準ボディよりも大きいサイズとなります。
初代モデルは2012年、長年欧州LCV市場のベストセラーであるトランジットの弟分としてデビューしました。FFレイアウトを採用したこのブランニューLCVは、商用仕様を「トランジット・カスタム」、これをベースにしたMPV仕様を「トルネオ・カスタム」と名付けられ、欧州をはじめ世界多くの市場で展開されました。当時はまだトランジット・コネクトやクーリエがデビューする前のため、大型版はトランジット、小型版はトランジット・カスタムが受け持ちました。市場ではデビュー直後から高評価を得た結果、デビュー翌年の2013年バン・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。
2017年には当時のフォード車に共通するグローバルデザインを取り込んだフェイスリフトが行われました。ここではエクステリアをはじめ、インフォテインメントシステムや、新世代ディーゼルユニットの採用など幅広い改良が行われ、これが初代モデルの最終仕様となります。初代最終型には商用バン仕様のパネルバン、貨客混在のダブルキャビン、送迎などの乗用用途のコンビが設定されました。
2019年には48Vマイルドハイブリッドと発電用エンジンを搭載したプラグインハイブリッドが追加されたほか、老舗キャンピングカービルダーのウェストファリアが架装するキャンピングカーのトランジット・カスタム ナゲットがデビューしています。
ほかにもトランジット・カスタムをベースにしたスペシャルモデルもラインナップされました。MS-RTと名付けられたこのモデルは、かつてラリードライバーとして活躍したマルコム・ウィルソン率いるMスポーツが手掛けたモデルで、商用車としての実用性を維持しつつ、オンロードでのドライバビリティを追求した究極のLCVとして開発されました。
2022年には現在販売されている2代目モデルにフルモデルチェンジされました。フォードがフォルクスワーゲンと商用車開発で提携したことにより、フォルクスワーゲン トランスポーターが兄弟車になりました。一方、中国市場では独自にフェイスリフトを行った初代モデルが現在も販売されています。(2024年11月現在)
日本市場には現行モデルも含め歴代モデルが正規導入された実績はありません。
ココがスゴイ!フォード 初代トランジット・カスタム
フォード 初代トランジット・カスタムを語るうえで外せないポイントが以下の5つです。
- トランジットブランドのタフさをミドルサイズLCVにも展開
- 最終型は環境性能の高いEcoBlueユニットにアップデート
- マイルドハイブリッドやプラグインハイブリッドの追加
- スマートフォン連携にも対応したインフォテインメントシステムを採用
- クロスオーバーやスポーティなどの要素を盛り込んだ多彩なラインナップ
スタイリングとインテリア
- 用途に合わせて選べる4種類のボディタイプ
- 次世代グローバルデザインを適用
- 水平方向を強調した新デザインのインストルメントパネルにアップデート
- モバイルオフィスとしての使い勝手を考えられたインテリア
ボディタイプは全4種類が設定されています。ショートホイールベース(SWB)となる全長4,973mmのL1と全長5,340mmのロングホイールベース(LWB)となるL2の2種類のホイールベースに対して、それぞれに全高1,922~2,000mmのノーマルルーフとなるH1と、全高2,285~2,366mmのハイルーフとなるH2の2種類のルーフが設定されており、積載する荷物や使い方に合わせて選択することができます。
最終型にあたるフェイスリフトでは、フロントセクションを中心にアップデートが行われました。キネティックデザインを採用していた従来モデルから一変、当時のフォード車に共通する次世代グローバルデザインが適用され、ハイマウントの台形グリルとスリムなヘッドランプのほか、シグネクチャLEDデイタイムランニングライトなどが新たに採用されました。サイドのスライドドアはバン仕様ではフルスチールのものが仕様により片側もしくは両側に設定されます。リアのバックドアは、欧州LCVとしては一般的な観音開きバックドアが設定され、180度開閉可能です。
エクステリアは仕様により大きく印象が異なり、これが初代モデルがもつポイントのひとつです。一般的な商用バンをはじめ、専用ホイールとボディ下部をブラックアウトしてクロスオーバー要素を盛り込んだACTIVE、レンジャー・ラプターを彷彿とさせる「FORD」のロゴ入り専用フリントグリルが装備された屈強な印象のTRAIL、レーシーなストライプとブラックアウトされたアルミホイールが印象的なSPORT、さらに専用エクステリアパーツやスポーツエクゾーストを備えたMS-RTと、バリエーションが豊富です。
インテリアは、最終型にあたるフェイスリフトでインストルメントパネルのデザインが一新されました。曲面を多用した有機的なデザインであった従来モデルから、キャビンの幅を強調する力強い水平方向のデザイン要素をベースにしたものにアップデートされました。インテリア素材も見直されたほか、運転席を中心に複数配置されるカップホルダーや、メーターパネル周辺の25L分をはじめ、インストルメントパネルにはクリップボードやモバイルデバイスが入る上部、A4ファイルが入る下部と多くの収納スペースが用意されるなど、長時間乗車する車内をモバイルオフィスとして快適に過ごせるように設計されています。
シート配列はバン仕様では助手席二人掛けの1列3人乗りとなり、ダブルキャビンでは2列、コンビでは3列シートが設定されます。
インフォテインメントシステムはFORD SYNC3システムが採用され、8インチのタッチスクリーンが組み合わされます。最新からは一世代前のシステムになりますが、AppleCarPlay/AndroidAutoを用いたスマートフォン接続(有線)にも対応しています。
搭載されるエンジンと燃費
パワーユニットは、ディーゼルのほかマイルドハイブリッドとプラグインハイブリッドの設定です。
- ディーゼル
2.0L 直4ターボ EcoBlue 105PS(77kw)/310Nm
2.0L 直4ターボ EcoBlue 130PS(96kw)/360Nm
2.0L 直4ターボ EcoBlue 170PS(125kw)/390Nm
2.0L 直4ターボ EcoBlue 185PS(136kw)/415Nm - マイルドハイブリッド
2.0L 直4ディーゼルターボ EcoBlue 130PS+電気モーター - プラグインハイブリッド
1.0L 直3ガソリンターボ EcoBoost 126PS+電気モーター
ディーゼルはフェイスリフトで従来モデルに設定されていたDuratorqから、EcoBlueユニットにアップデートされました。AdBlueを組み合わせてクリーンな排気ガスと低燃費を実現した新世代ユニットで、全て2.0L直4に105PS/130PS/170PS/185PSの4種類のチューニングが設定されています。燃費性能は130PS仕様の欧州複合で14.0km/Lです。
これに加えて最終型ではマイルドハイブリッドとプラグインハイブリッドが設定されています。マイルドハイブリッドは2.0L直4ディーゼルのEcoBlueユニットを中心にした48Vシステムに電気モーターが組み合わされてアシストする一方、プラグインハイブリッドは発電専用にコンパクトな1.0L直3ガソリンのEcoBoostユニットと電気モーターが組み合わされたシステムで、発電もしくは充電したバッテリーの電力でモーターを駆動します。
トランスミッションは6MTのほか、2ペダルは一部仕様に6ATが設定されています。(プラグインハイブリッドには変速機がありません)SelectShiftと呼ばれるこのオートマチックは、シフトノブ横に備えられたボタンでマニュアル操作ができるのに加え、滑りやすい路面や急坂などではロックアップする機能も持ち合わせています。
積載量と荷室空間
初代トランジット・カスタムの荷室に関するスペックは以下の通りです。
デビュー当時ではトップクラスを誇った積載性能は、特にL2ボディでは広大な空間が備わります。標準装備される強固なフルスチールのバルクヘッドは、積載物から乗員を守るだけでなく一部が跳ね上げ式になっており、貫通させることで長尺物の積み込みも可能です。
ボディタイプ | L1H1 | L1H2 | L2H1 | L2H2 |
---|---|---|---|---|
最大荷室長(mm) | 3,037 | ← | 3,404 | ← |
最大荷室幅(mm) | 1,775 | ← | ← | ← |
ホイールアーチ間荷室幅(mm) | 1,351 | ← | ← | ← |
最大積載容量(立方メートル) | 6.0 | 7.2 | 6.8 | 8.3 |
最大積載量(kg) | 695~1,469 | ← | 861~1,417 | ← |
サイズとスペック
【全長×全幅×全高】4,973×1,925×1,986 mm(ミラー部分含まず)
【ホイールベース】2,933mm 【トレッド】前/後:-/ -mm
【車両重量】 -kg
●エンジン
【構成】水冷直列4気筒ターボ DOHC16V フロント横置き
【総排気量】1,996cc 【直径×内径】 84.0×90.0mm 【圧縮比】-:1
【最高出力】130ps(96kw)/-rpm 【最大トルク】360Nm/-rpm
【燃料容量】-L
●駆動系
【駆動方式】FF 【トランスミッション】6AT
【サスペンション】(前)マクファーソンストラット / (後)リジット
【ブレーキ】(前)ベンチレーテッドディスク / (後)ディスク
【タイヤ】(前後)-/-R-
●パフォーマンス
【最高速度】-km/h 【0-100km/h加速】-秒
【燃費】約14.0km/L(新欧州複合基準)【価格】ー
歴史とトリビア
フォード 初代トランジット・カスタム関連の歴史とトリビアを簡単にご紹介します。
- 2013年、2020年の2度のバン・オブ・ザ・イヤーを受賞
- キャンピングカー仕様のナゲットはウェストファリアが架装を担当
- MS-RTを手掛けたマルコム ウィルソンはかつてフォード RS200のテストドライバーを担当
- 2021年のEuroNCAPにて運転支援機能のゴールド評価を獲得
- 中国市場では初代モデルのフェイスリフト版が現在も販売(2024年現在)
ライバル
全長5mクラスの欧州ミドルサイズLCVは、各社がラインナップするライバルが多い市場です。そのなかでも近しいライバルとしてフォルクスワーゲン T6.1トランスポーターを挙げます。2代目トランジット・カスタムをベースにした新型モデルがデビューしましたが、T6.1は今でもお客様からのお問合せが多く、根強いニーズがある一台です。
- フォルクスワーゲン T6.1トランスポーター
- ルノー トラフィック
- シトロエン ディスパッチ
- トヨタ プロエース
- 日産 NV300
並行輸入するなら。オススメのグレードと価格情報
欧州をはじめ各国で高い評価を得た初代トランジット・カスタムですが、フォードのLCVが日本に正規導入された実績がないのに加えて、フォードが日本のインポーター事業から撤退したため、残念ながら初代トランジット・カスタムは正規導入されませんでした。そのため、初代トランジット・カスタムをご希望のお客様には並行輸入がおすすめです。ここでは最終年式に近いフェイスリフト後の右ハンドル英国仕様は2021年、左ハンドル欧州仕様は2020年モデルのグレード構成を参考情報としてご紹介します。
グレード構成(右ハンドル英国仕様:2021年モデル)
- LEADER
15インチまたは16インチスチールホイール+ハーフキャップ、デイタイムランニングライト、片側スライドドア、マルチピースリアバンパー、フロントパワーウィンドウ、8ウェイ調整可能なアームレスト付き運転席、リフトアップ機能付き助手席デュアルシート、A4ファイルが収納可能なグローブボックス、ロードスルー機能付きスチールバルクヘッド(バン仕様)、リモート集中ドアロックなどが装備(エアコンはオプション) - TREND
(LEADERに対して)16インチスチールホイール+フルホイールキャップ、ボディ同色ハウジング付き電動格納ドアミラー、カラードバンパー、プロジェクター式ハロゲンヘッドライト、フロントフォグランプ、クイッククリアヒーター付きフロントガラス、レザーステアリングホイール、折り畳み式助手席デュアルシート、8インチTFTカラータッチスクリーン、フロント/リアパーキングセンサー、クルーズコントロールなどが装備(エアコンはオプション) - TRAIL
(TRENDに対して)16インチ10スポークアルミホイール、FORDロゴ入り専用フロントグリル、ボディ同色ドアハンドル、カラードリアバンパー、フルレザーインテリア、マニュアルエアコン、機械式LSDなどが装備 - LIMITED
(TRENDに対して)16インチアルミホイール、カラードモールディング、両側スライドドア、クローム仕上げのフロントグリル、折り畳み式テーブル付き助手席デュアルシート、レザーシフトノブ、マニュアルエアコンなどが装備 - ACTIVE
(LIMITEDに対して)17インチアルミホイール、アクティブスタイルフロントグリル、アクセントカラーのドアミラー、ボディ同色下部アクセント付きフロントバンパー、シルバールーフレール、エンボス加工された専用レザーシートなどが装備 - SPORT
(LIMITEDに対して)17インチもしくは18インチアルミホイール、スポーツスタイリングキット(専用バンパースカート/サイドスカート、ストライプなど)、パートレザーシートトリム、トレーラーヒッチアシスト付きリアビューカメラなどが装備 - MS-RT
(LIMITEDに対して)専用ボディスタイリング、バイキセノンヘッドライト、MS-RTツインエクゾースト、MS-RTロゴ入りナッパレザー/スエードインテリア、ヒーター付きフロントシート、専用スポーツステアリングホイールなどが装備
グレード構成(左ハンドル欧州仕様:2020年モデル)
- BASIS
15インチまたは16インチスチールホイール+ハーフキャップ、観音開きバックドア、片側スライドドア、リフトアップ機能付き助手席デュアルシート、A4ファイルが収納可能なグローブボックス、ロードスルー機能付きスチールバルクヘッド(バン仕様)、セーフティブレーキアシスタント、サイドウィンド・スタビレーション、リモート集中ドアロックなどが装備(エアコンはオプション) - TREND
(BASISに対して)16インチスチールホイール+フルホイールキャップ、ヒーテッド電動格納ドアミラー、カラードバンパー、プロジェクター式ハロゲンヘッドライト、フロントフォグランプ、防塵/花粉フィルター付きマニュアルエアコン、レザーステアリングホイール、クルーズコントロールなどが装備 - TRAIL
(TRENDに対して)16インチ10スポークアルミホイール、FORDロゴ入り専用フロントグリル、ボディ同色ドアハンドル、カラードリアバンパー、クイッククリアヒーター付きフロントガラス、ハーフレザーシート、トレーラーヒッチアシスト付きリアビューカメラなどが装備 - LIMITED
(TRENDに対して)16インチ10スポークアルミホイール、クイッククリアヒーター付きフロントガラス、カラードモールディング、両側スライドドア、クローム仕上げのフロントグリル、8インチタッチスクリーン、AppleCarPlay/AndroidAuto接続対応、ヒーター付きファブリックシートなどが装備 - ACTIVE
(LIMITEDに対して)17インチアルミホイール、アクティブスタイルフロントグリル、アクセントカラーのドアミラー、ボディ同色下部アクセント付きフロントバンパー、シルバールーフレール、5ウェイ電動調整可能なヒーター付き運転席、パートレザーシートトリム、ハイビームアシストなどが装備 - SPORTS
(LIMITEDに対して)17インチもしくは18インチアルミホイール、スポーツスタイリングキット(専用バンパースカート/サイドスカート、ストライプなど)、パートレザーシートトリムなどが装備
残念ながら日本には正規導入されなかったトランジット・カスタムですが、ボディタイプやグレードなど多くの組み合わせが設定されています。そのなかでもオススメは右ハンドル英国仕様、L1H1ボディのTRENDグレードにEcoBlueディーゼルの130PS仕様に6ATの組み合わせです。日本で乗るにも比較的に乗りやすい全長5mを切るL1H1ボディに、TRENDグレードはボディ同色のエクステリアパーツに8インチタッチスクリーンなど装備が充実したグレードです。日本で乗るには必須といえるエアコンがオプションですが、装着された個体をお探しいたします。これに環境性能にも優れたEcoBlueの130PS仕様に2ペダルの6ATは、オートマチック限定免許でも運転でき、お仕事や趣味のトランスポーターにも活躍してくれそうなチョイスです。フォルクスワーゲンと提携して開発された新型モデルも魅力的ですが、バリエーションの多彩さや、欧州でも人気車種であったため中古車市場に程度のよい個体も多く、新型モデルと比べてリーズナブルに手に入れられるのは大きな魅力です。国産商用バンよりも大きく、そして楽しめるこの一台を相棒に選んでみませんか。
- フォード 初代トランジット・カスタム L1H1 TREND 2.0 EcoBlue 130PS 6AT(右ハンドル英国仕様)
- フォード 初代トランジット・カスタム L1H1 TREND 2.0 EcoBlue 105PS 6MT(右ハンドル英国仕様)
合わせて初代モデルをベースにしたキャンピングカー仕様のトランジット・カスタム ナゲットや、乗用仕様のトルネオ・カスタムも並行輸入可能です。それぞれ解説記事がありますのでご参照ください。
(現地値引き交渉前価格:お問合せください)
(現地値引き交渉前価格:お問合せください)
掲載価格について(為替差益、現地ディスカウント還元!)
※ウィズトレーディングでは参考乗り出し価格例として新車、中古車は掲載時の為替レートで表記しておりますが、お見積り等はご依頼時点の為替レートを適用、差益分があれば還元させていただきます。
また、欧州各国の仕入れ先はディーラーとの価格交渉も頑張っております。これらのディスカウントも当然、皆様へのご提案価格へ反映させていただきます。
現地との綿密な相談による「正確さと速さ」をモットーにしています
海外では仕様・オプション等の位置づけが日本の慣習と異なることも多く、並行輸入では注意が必要です。新車・中古車共にご納得のできる仕様を確実にご納車出来るように、時差を考慮しつつ、仕入れ先とは何度も仕様確認や質問事項をやり取りしており、正確さと速さをモットーに務めております。