日本市場で人気のジャンル「ラージクラスミニバン」。広くて豪華な室内で最近では高級セダンからの乗り換えやショーファー付きのクルマとして選ばれることも多いようです。しかし、乗員の快適性を追求する一方、高速安定性や走りの質感はややトレードオフになっているように感じます。そこでどちらも重視したいコアなクルマ好きにぜひ選んでいただきたいのがここで紹介する一台。しかも「トヨタ」です。
今回はトヨタの欧州製ラージクラスミニバン(MPV)、トヨタ プロエース ヴァーソ(TOYOTA Proace Verso)を解説。走りの質を諦めないユーザーに向けたこのモデルの概要・スペック・価格・並行輸入で乗るための情報をご紹介します。
トヨタ プロエース ヴァーソとは
トヨタ プロエース ヴァーソはトヨタの欧州市場向けラージクラスミニバン。日本でこの分野の代名詞であるアルファード/ヴェルファイアが欧州市場で販売されていないため、プロエース ヴァーソは最も大きいモデルです。ボディは3種類設定されており、全長は、最大のLongで5,309mm、アルファードより一回り以上大きく、ハイエースのロング級サイズ。最小のCompactは4,609mm、ミドルサイズミニバンのノアやヴォクシーより短くなりますが、全幅は1,920mm、全高は1,910mmで、ランクル プラドを上回りランクル200に近いもの。かなりの迫力です。
現在販売されているのはプロエースとしては2代目となるモデル。バン仕様の「プロエース」と、乗用仕様の「プロエース ヴァーソ」があり、「ヴァーソ」の名前は欧州トヨタ車の乗用ワゴンモデルに付けられる共通したサブネームです。プラットフォームはPSA EMP2を採用し、生産は兄弟車と同じくフランス リュ・サン・タマンのPSA オルデン工場(セヴェル・ノール)で生産されています。
プロエースはトヨタ自社開発のモデルではなく、PSAとフィアットのジョイントベンチャーで開発されたシトロエン ディスパッチ(ジャンピー)、プジョー エキスパート、フィアット スクードの2代目モデルにOEM車として途中で追加されました。初代モデルのデビューは2013年。日本ではかつてグランビアの名前で販売されていたボンネット付きの欧州版ハイエースの後継車という扱いです。
2015年末に発表された現行モデルもPSAのOEM車ですが、トヨタが初期から開発に携わることで、トヨタのミニバン作りのノウハウが生かされていると言われています。兄弟車にはプジョー トラベラー/エキスパート、シトロエン スペースツアラー/ディスパッチ(ジャンピー)、ボクスホール/オペル ヴィヴァーロがあります。
ココがスゴイ!トヨタ プロエース ヴァーソ
トヨタ プロエース ヴァーソを語るうえで外せないポイントが以下の5つです。
- PSAのOEM車ながら従来モデルと比べてより深くトヨタが開発に関与
- 日本のミニバン作りで培った「おもてなしの精神」が装備の端々に見られる
- 用途に合わせて3つのボディタイプを設定、VIP仕様も
- 乗り心地の良さと走りの良さはPSA車譲り
- 最新のEuroNCAPでは最高評価である5つ星の高い安全性
トヨタ プロエース ヴァーソ コンセプト動画(約1分30秒)
スタイリングとインテリア
- 兄弟車のなかでもトヨタと分かるデザイン処理
- 巨大なグラスルーフは抜群の開放感
- グレードに合わせて設定される7人から9人乗りのシート構成
- 質実剛健でエクゼクティブを満足させるインテリア
ボディタイプは3種類。全長が短い順に「Compact」「Medium」「Long」が設定されています。
- Compact:全長 4,609mm、ホイールベース 2,925mm
- Medium:全長 4,959mm、ホイールベース 3,275mm
- Long:全長 5,309mm、ホイールベース 3,275mm
※全幅 1,920mm×全高 1,910mmは共通
デザインはフロントのトヨタのシンボルマークを中心にキリリと釣り上がったキーンルックを採用。MIRAIをはじめ、プリウス、新型カローラなどと共通する意匠のデザイン処理は、各部のコンポーネントを兄弟車と共有しつつもトヨタ車であることをしっかりと主張しています。
その他のエクステリアのトピックとして「Toyota Skyview PanoramicRoof」があります。ほかのトヨタ車と共通する名称のグラスルーフは、プロエースのボディサイズに合わせた巨大なもので乗員に対して抜群の開放感をもたらします。
また、一部グレードにはジェスチャー対応のパワースライドドアを装備。雨の日や荷物で手が塞がっていても足のジェスチャーでドアの開閉が可能です。日本では装着率の高い装備ですが、欧州MPVではまだ採用率は低いため、このあたりにもトヨタが持つミニバン作りのノウハウを活かした「おもてなしの精神」が垣間見えます。
インテリアは基本、日本のラージクラスミニバンと比べて華美な豪華さはなく、基本的に質実剛健なもの。しかし質感高く仕上がっています。
シート数は目的/グレードに合わせて3種類。主に送迎用途などを想定したフロントベンチシートの9人乗り、ファミリー向け用途の8人乗り、そしてVIPグレードには2列目キャプテンシートのショーファー用途を想定した7人乗りが設定されます。シートトリムはファブリック、PVCレザー(人工皮革)、そしてフルレザーが選択できます。さらに各シートはフォールディングとロングシートレールを採用することにより、シートを取り外さなくても足元を広げたり、広大なラゲッジを確保することが可能です。
これらのなかで、注目は7人乗りのVIP仕様。2列目の大ぶりで掛け心地の良いキャプテンシートはマッサージ機能付き。加えて回転対座も可能です。左右シート間のコンパートメントにはライティングテーブルが内蔵されていますが、ノートパソコンも使用可能なしっかりしたもの。さらに専用のプレミアムサラウンドシステムを装備しています。プロエースヴァーソのVIP仕様はアルファードのエクゼクティブラウンジのような華美な豪華さはないかも知れませんが、快適な移動ビジネス空間として、きっとエクゼクティブも満足してもらえることでしょう。
搭載されるエンジンと燃費
搭載されるエンジンはディーゼルのみ、1.5Lと2.0L(2仕様)の3種類。
- ディーゼル
1.5L 直4ディーゼルターボ 5WZ-HV 120PS(88kw)/300Nm 6MT
2.0L 直4ディーゼルターボ 4WZ-FTV 150PS(110kw)/370Nm 6MT
2.0L 直4ディーゼルターボ 4WZ-FHV 177PS(130kw)/400Nm 8AT
これらのディーゼルエンジンはPSAグループでBlueHDiと呼ばれるWZ型です。このユニットは動力性能と環境性能のバランスに優れた定評のあるもの。プロエース ヴァーソでは排気量とチューニングによって上記の3種類が設定されています。
国産ラージクラスミニバンのようにハイパワーなガソリンエンジンの設定はありませんが、ディーゼルならではの低速トルクの太さと低燃費は大きな魅力です。特に従来の1.6Lに代わる新世代1.5Lディーゼルはベストディーゼルとの呼び声も高く、適度なパワー/トルクに加え20.8km/L(NEDC)の低燃費。一番厳しい条件となるハイパワーで車両重量が重い、2.0L 177PSのロング/VIP仕様でも約18.5km/L(NEDC)をマークします。
トランスミッションは、6MTが基本。ハイパワー版の177PS仕様にのみ8速ATが設定されます。この8速ATはPSAでEAT8と呼ばれる日本のアイシンAW製のもの。トルクコンバーター式ならではの滑らかな変速と多段化による燃費性能の向上が魅力。採用車種も増え高い評価を受けています。
走行性能とハンドリング
サスペンションはフロント:マクファーソンストラット、リア:ウィッシュボーンを採用しています。この足回りを活かした走行性能はプロエース ヴァーソの大きな魅力のひとつ。ラージクラスミニバンでありながらも「走る」「曲がる」「止まる」の走りの基礎がしっかり作り込まれています。
このハンドリング・乗り味はPSAグループの各モデルにも共通するもの。尖った性能はないかも知れませんが、基本を押さえた質の高い走りをドライバーは感じることができるでしょう。燃費の良いディーゼルエンジンと合わせて、フル乗車でも長距離を安全・快適に走れるグランドツアラーとしての一面も持ち合わせています。
サイズとスペック
【全長×全幅×全高】5,309×1,920×1,910 mm
【ホイールベース】3,275mm 【トレッド】前/後:1,630 / 1,618mm
【車両重量】1,913kg
●エンジン
【構成】水冷直列4気筒直噴ターボ DOHC16V フロント横置
【総排気量】1,997cc 【直径×内径】85.0×88.0mm 【圧縮比】16.7:1
【最高出力】177ps(130kw)/3750rpm 【最大トルク】400Nm/2000rpm
【燃料容量】69L
●駆動系
【駆動方式】FF 【トランスミッション】8AT
【サスペンション】(前)マクファーソンストラット / (後)ウィッシュボーン
【ブレーキ】(前)ベンチレーテッドディスク / (後)ディスク
【タイヤ】(前後)225/55R17 XL
●パフォーマンス
【最高速度】182km/h 【0-100km/h加速】8.8秒
【燃費】約18.5km/L(NEDC)
【価格】英国仕様 2019モデル:£47,545
歴史とトリビア
プロエース関連の歴史とトリビアを簡単にご紹介します。
- PSAとのジョイントベンチャーはアイゴに続き2例目
- ボンバン製造のノウハウがなかったことからOEM車となったという説も
- 日本ではグランビアの名前で販売されていた欧州版ハイエースの後継車種
- プロエースだけでなく海外向けハイエースもノーズ付きスタイルに
- 一回り小さい弟分のプロエース シティが追加予定
ライバル
兄弟モデル以外にも、欧州LCV(小型商用車)をベースとしたミニバンは老舗フォード トランジットファミリーのトルネオカスタムや、フィアットも加わりPSAと並び兄弟車の多いルノー トラフィック系などライバルも多いです。最も有力なライバルは抜群の質感を誇ると言われるフォルクスワーゲン T6ではないでしょうか。しかし、T6もモデルチェンジが近いという噂もありますので動向から目を離せません。
- フォード トルネオ カスタム
- シトロエン スペースツアラー
- プジョー トラベラー
- ボクスホール ヴィヴァーロ ライフ
- フォルクスワーゲン T6
- ルノー トラフィック
並行輸入するなら。オススメのグレードと価格情報
ラージクラスミニバンが大きな支持を得ている日本市場ですが、トヨタが新たにプロエース ヴァーソを導入する可能性は、人気の既存モデルとの兼ね合いがあるため低いでしょう。そのためプロエース ヴァーソを手に入れるには並行輸入が最も確実な方法です。
グレードは3つとパックオプションの設定。シンプルで主に送迎用途を想定した9人乗りグレード「Shuttle」、17インチアルミホイールやパワースライドドアなど装備が充実し、ファミリユースを想定した「Family(+Premium Pack)」、2列目キャプテンシートや各種おもてなし装備がありショーファー的な使い方も可能な7人乗りの「VIP」があります。
英国仕様の右ハンドルモデルで選択可能な組み合わせは次表の通り。
グレード/ボディ | Compact | Medium | Long |
---|---|---|---|
Shuttle | – | 1.5L ディーゼル 6MT 2.0L ディーゼル 6MT |
1.5L ディーゼル 6MT 2.0L ディーゼル 6MT |
Family | 2.0L ディーゼル 6MT 2.0L ディーゼル 8AT |
2.0L ディーゼル 6MT 2.0L ディーゼル 8AT |
– |
Family Premium Pack |
2.0L ディーゼル 6MT 2.0L ディーゼル 8AT |
2.0L ディーゼル 6MT 2.0L ディーゼル 8AT |
– |
VIP | – | – | 2.0L ディーゼル 8AT |
この中でもオススメはLong仕様にのみ設定されるVIPに2.0L 177PS仕様ユニットと8速ATの組み合わせ。これは国産ラージクラスミニバンとは少し違ったエクゼクティブもドライバーも快適に「どこまでも走れる」一台としてのチョイスです。
- トヨタ プロエース ヴァーソ VIP Long 2.0 Diesel Automatic
- トヨタ プロエース ヴァーソ Shuttle Medium 1.5 Diesel Manual
もちろんお近くのトヨタディーラーに行けば国産ラージクラスミニバンは簡単に手に入りますが、欧州仕込みの走りを持った「プロエース ヴァーソを敢えて選択する」というのはきっとこのサイトの読者なら分かっていただけるかも知れません。また、欧州製ミニバンに乗りたいが、様々な制約で国産ブランドでなければならない、という方にとっても最良な一台になるのではないでしょうか。
VIPグレード以外にも、各ボディタイプおよびグレード、そしてバン仕様も並行輸入できますので、お気軽にお問い合わせください。
(£1=135円時・値引き交渉前価格)
(値引き交渉前現地価格:£47,545)\8,537,000
(値引き交渉前現地価格:£32,345)\6,225,000
ディーゼル車をご希望の方へ
参考乗出し価格が掲載されていない場合には、別途お見積りいたしますのでお問合せ下さい。
なお、ディーゼル車を取り巻く環境は年々厳しくなっています。ディーゼルエンジン搭載車をご希望の場合には以下の記事もご覧ください。
掲載価格について(為替差益、現地ディスカウント還元!)
※ウィズトレーディングでは参考乗り出し価格例として新車、中古車は掲載時の為替レートで表記しておりますが、お見積り等はご依頼時点の為替レートを適用、差益分があれば還元させていただきます。
また、欧州各国の仕入れ先はディーラーとの価格交渉も頑張っております。これらのディスカウントも当然、皆様へのご提案価格へ反映させていただきます。
現地との綿密な相談による「正確さと速さ」をモットーにしています
海外では仕様・オプション等の位置づけが日本の慣習と異なることも多く、並行輸入では注意が必要です。新車・中古車共にご納得のできる仕様を確実にご納車出来るように、時差を考慮しつつ、仕入れ先とは何度も仕様確認や質問事項をやり取りしており、正確さと速さをモットーに務めております。
https://with-cars.com/about-us/warranty/