今回は、フランス・シトロエンのLCV(小型商用車)、新型シトロエン ベルランゴ バン(CITROEN Berlingo Van)を解説。2018年にフルモデルチェンジした最新モデルの概要・スペック・価格等、並行輸入で乗るための情報をご紹介します。
シトロエン ベルランゴとは
2018年にフルモデルチェンジしたシトロエンのLCV、ベルランゴ バン。シトロエンの公式サイトでは、このモデルを1928年にデビューしたタイプC4バン(現在販売されているC4とは別物となる戦前のモデル)をルーツとしており、シトロエンの商用バンとして100年近くの歴史があると紹介しています。
ベルランゴとしての初代モデルデビューは1996年。1980年代から長く生産されたヴィザベースの商用バン、シトロエン C15の後継モデルとなり、兄弟車にはプジョー パルトネールがあります。初代/2代目共に10年近く生産されるロングセラーとなり、現在販売されているモデルは3代目。2018年のジュネーブモーターショーでデビューしました。当モデルから最近PSAグループ入りしたボクスホール/オペルのコンボも兄弟車に仲間入りしています。
ボディサイズは、プジョー パルトネールと同じく、全長:4,403mm×全幅:1,848mm×全高:1,840mm(M仕様)。国産車の場合は日産 NV200バネットとほぼ近く、ロングホイールベースのXL仕様でもトヨタ ハイエース(マツダ ボンゴブローニィ)や日産 NV350キャラバンよりコンパクトなサイズになります。
ココがスゴイ!シトロエン ベルランゴ バン
シトロエン ベルランゴ バンを語るうえで外せないポイントが以下の5つです。
- ボディタイプはホイールベースの違いで2種類を用意
- 用途によって柔軟に変化する乗員空間と高い積載性の荷室
- 新世代BlueHDiディーゼルを新設定。PureTechガソリンも追加予定
- ヘビーデューティーな用途にも応える仕様も用意
- ベストLCVとして数々の賞を受賞
シトロエン ベルランゴ バン コンセプト動画(約2分10秒)
スタイリングとインテリア
- 兄貴分となるディスパッチの流れをくむデザイン
- リアドアは6:4分割の観音開き
- ボディーカラーは全6色
- モバイルオフィスとしても使えるEXTENSO CABコンセプト
- 長時間でも疲れず、機能性が高いEXTENSOシート
- 国際規格 ISO27956準拠のフルスチールバルクヘッドを装備
デザインは、近年のデビューしたシトロエンのデザイン言語を採用しており、兄貴分となるディスパッチの流れを組んだものになっています。ボディタイプはホイールベースに合わせて2種類で、どちらもリアドアがスチールパネルとなるパネルバン仕様になります。
リアドアは基本片側(歩道側)スライドドアのみですが、オプションで両側スライドドア(£220)も選択可能です。リアバックドアは全車観音開きのものが採用。6:4に非対称分割されたバックドアは、180度まできっちり開き積載しやすくなっています。
ほかにもヘビーデューティな用途に応えるWORKERグレードには、エンジンを悪路から守るアンダープロテクションパネルや、地上最低高を30mmアップするセッティングがされています。
インテリアのキーワードは「EXTENSO」。新型ベルランゴ バンはこのキーワードのコンセプトに則って設計されています。
要となるのは「EXTENSO modular folding passenger bench seat」と呼ばれるシート。基本フロント3人がけのベンチシートですが、助手席を畳めばバルクヘッドを貫通させることで長尺物の積載、真ん中シートを倒したら出現する可動式テーブルではノートPCやタブレットの操作も可能(合わせてAC電源やUSBアウトレットなども設定)。
これらを用途に合わせて組み合わせることで「荷物の積載」「移動オフィス」「快適な移動」と柔軟に変化できます。これをメーカーは「EXENSO CAB」と名付けています。もちろんこのシートは、シトロエンのモデルだけあり、大ぶりで掛け心地が良く、長時間乗車でも疲れないと言われています。
インパネデザインは、パルトネールが最近のプジョーが採用しメーターをハンドルの上に見えるよう配置する「i-COCKPIT」を採用しているのに対して、ベルランゴは一般的な配置です。兄弟車とはいえメーカーの思想に則って作り分けているようです。インフォテインメントシステムは最新の大画面8インチパネルを採用。スマートフォンのミラーリングディスプレイ対応だけでなく、オプションでワイヤレスチャージャーも装備可能です。
搭載されるエンジン、燃費とボディタイプ、グレード
ベルランゴ バンに搭載されるエンジンは現時点(2019年5月)ではBlueHDiディーゼルのみの設定
- ガソリン
1.2L 直3ターボ PureTech110 110PS(81kw)/250Nm 6MT(2019年中追加) - ディーゼル
1.6L 直4ターボ BlueHDi75 75PS(55kw) /230Nm 5MT
1.6L 直4ターボ BlueHDi100 99PS(73kw) /254Nm 5MT
1.5L 直4ターボ BlueHDi130 131PS(96kw) /300Nm 6MT/EAT8
ベルランゴ バンのパワーユニットはガソリンとディーゼルそれぞれ設定されていますが、現時点(2019年5月)で販売されているのはBlueHDiディーゼル仕様のみで、ガソリンのPureTechは2019年中に追加予定と言われています。そのなかでも注目は1.5LのBlueHDi130。フォードとも共有する新世代のディーゼルユニットで、日本にも最近ではプジョー308などに搭載され上陸しています。旧世代となる1.6L BlueHDi100ディーゼルと比較して、排気量が小さくなっているのにも関わらず出力は向上。合わせて低燃費も実現している力作ユニットです。燃費は商用車の場合、特に積載量などにより左右されますがBlueHDi130ユニットの場合、概ね23km/L前後(欧州複合燃費)の低燃費です。
トランスミッションは、5速MTを基本に、BlueHDi130には6速MTと2ペダルのEAT8がそれぞれ設定。これらの組み合わせはパルトネールと同一です。EAT8は日本のアイシン・エー・ダブリュー製の8速オートマチック。従来のEAT6に引き続き滑らかな変速が魅力。最近のPSA各モデルに採用を広げています。
ボディタイプ、グレード構成
ボディタイプはホイールベースが標準サイズの「M」に最大積載業が650kgと1,000kgの2種類。ロングホイールベースの「XL」は最大積載量が950kgが1種類設定。これらは全てリアウィンドウがスチールとなるパネルバンになります。
グレードは、ベーシックかつヘビーデューティな用途を想定した「WORKER(アドバンスド・グリップ・コントロール標準装備)」をはじめ、8インチタッチスクリーンやパーキングセンサーなど充実装備の「ENTERPRISE」、リアや死角の情報を表示するサラウンドリアビジョンや、16インチアルミホイールなどを装備した最上級グレードの「DRIVER」の3グレードが設定。なお、WORKER仕様はエアコンが装備されていないので(メーカーオプション £600)注意が必要です。
エンジン・ミッションとボディサイズ、グレード構成の展開は次のようになります。次項と合わせてご覧ください。数値は最大積載量(kg)です。
M仕様 | XL仕様 | |
---|---|---|
BlueHDi75 5MT | WORKER 1000 ENTERPRISE 650 Proffesional 650 |
– |
BlueHDi100 5MT | WORKER 1000 ENTERPRISE 1000 DRIVER 1000 |
WORKER 950 ENTERPRISE 950 |
BlueHDi130 6MT | ENTERPRISE 1000 DRIVER 1000 |
ENTERPRISE 950 DRIVER 950 |
BlueHDi130 EAT8 | ENTERPRISE 1000 DRIVER 1000 |
DRIVER 950 |
積載量と荷室空間
- ライバルより優位な最大積載量1,000kg仕様を設定
- ユーロパレットならフォークリフトからそのまま積載可能
- 過積載を防止する過負荷インジゲーターを設定
ベルランゴ バンの最大積載量は、兄弟車のパルトネールと同じく、ボディタイプに合わせて650kg、1,000kg(M仕様)、950kg(XL仕様)が設定されます。そのなかでも注目はMの1,000kg仕様。これはXLよりコンパクトなボディサイズで1,000kgもの最大積載量を実現しています。ボディサイズが近い日産 NV200バネットの最大積載量が600kgであるのに比べると、ベルランゴ バンの積載性の高さがご理解いただけるでしょう。
荷室空間は幅:1,550mm(ホイールアーチ間隔:1,229mm)×長さ1,817mm(XL仕様は2,167mm)×高さ1,236mm(XL仕様は1,243mm)となっており、欧州で一般的なユーロパレットなら、フォークリフトでそのまま積み込みが可能です。さらに日本のフルキャブの商用バンと比べ、ボンネットがあるぶん、荷室空間に影響するように感じますが、長尺物の積載性はフロント助手席を折りたたむことで最大3,090mm(LONGは3,440mm)まで積載可能です。
歴史とトリビア
シトロエン ベルランゴ バン関連の歴史とトリビアを簡単にご紹介します。
- ベルランゴを含め歴代シトロエンの小型版モデルはどれもロングセラー
- 前モデルとなるC15(シトロエンヴィザがベース)は22年間で118万台以上生産
- メーカー公式に現行ベルランゴバンの1/64サイズミニチュアが販売(現地では5ユーロ)
ライバル
ライバルには、兄弟車となる、プジョー パルトネール、オペル/ボクスホール コンボ バンのほかに、欧州LCVには各メーカーがリリースするライバルが数多くあります。そのなかでも注目は2020年にフルモデルチェンジすると言われている次期型ルノー カングー。そしてフルモデルチェンジ前ですが、2019年5月に日産がカングーの兄弟モデルとしてNV250を新たにリリースしたため、カングーもメルセデス・ベンツ シタン、日産 NV250と三兄弟となりました。さらに、次期カングーにはアライアンス入りした三菱の兄弟モデルもあるとも言われるため、ベルランゴをはじめとするPSAグループの兄弟車と、カングーをはじめとするルノー日産三菱アライアンスの兄弟車が今後、欧州市場を舞台にアツい戦いを繰り広げることになりそうです。
- プジョー パルトネール(バン)
- オペル コンボ バン
- ルノー カングー バン(次期型2020年フルモデルチェンジ予定)
- 日産 NV250
- メルセデス・ベンツ シタン
- フォルクスワーゲン キャディ
- フォード トランジット コネクト
ベルランゴ バンを日本で乗るなら並行輸入
今回紹介したベルランゴのパネルバンをはじめ、乗用モデルも含めて、ベルランゴが今まで日本市場に正規で導入された実績はありません。そのためベルランゴ バンを手に入れるには、今のところ並行輸入が現実的な選択肢です。
商用車の価格表示について
商用モデルはお客様のご要望がそれぞれ異なること、メーカーの仕様・オプション等が多岐にわたるため、サンプルの価格をご提示していません。個別にご相談の上でお見積りを差し上げます。
カタログ等の仕様表記も複雑なものが多いので、ご不明な点はお気軽にご相談ください。
特にルノー トラフィック、VW T6、PSAグループのモデル、フォード トランジット等は過去に何度もお見積りさせていただいていますので、詳しくご説明できると思います。
ディーゼル車をご希望の方へ
参考乗出し価格が掲載されていない場合には、別途お見積りいたしますのでお問合せ下さい。
なお、ディーゼル車を取り巻く環境は年々厳しくなっています。ディーゼルエンジン搭載車をご希望の場合には以下の記事もご覧ください。
画像と動画
シトロエン バンモデルの歴史紹介動画(約1分)