「高速走行時の高い安定性」、「長距離でも疲れない快適性」、そして「高いユーティリティ性」をもつ欧州LCV。ほぼ日本には正規導入されないこのジャンルですが、ウィズトレーディングでは欧州LCVを直接お取り寄せ希望されるホットなお客様からのお問い合わせや輸入実績が多くあります。
そのなかでもメルセデス・ベンツのLCVは、お仕事の相棒だけでなく、質実剛健なMPVとしてもマッチしそうです。
今回はメルセデス・ベンツの中型LCV、ヴィトー(MercedesBenz Vito)の乗用仕様「ヴィトー・ツアラー(Vito Tourer)」を中心に解説。概要・スペック・価格・並行輸入で乗るための情報を解説します。
メルセデス・ベンツ ヴィトーとは
ヴィトーはメルセデス・ベンツの全長5mクラスのLCVで、大型LCVのスプリンターと、小型LCVのシタンの中間に位置するモデルです。ボディサイズは、全長:5,140mm×全幅:1,928mm×全高:1,914 mm(Lang仕様の場合・ミラー部分を含まず)で国産車ではトヨタ ハイエースより全般的に大きく、グランエースや海外版ハイエースに近いサイズです。
初代モデルのデビューは1996年。かつて販売されていたワンボックス型バンのMB100D(W631型)の後継的な役割としてデビューしました。W638型とナンバリングされた初代モデルはMB100Dに引き続き駆動方式にFFを採用したノーズ付きの1.5ボックススタイルのLCVとなりました。パネルバンをはじめとする商用モデルはVito(ヴィトー)、内外装を豪華な装飾をした上級MPVに仕上げられたモデルが、初代Vクラスとなります。
2014年にはW447型とナンバリングされた3代目モデルにフルモデルチェンジ。現在販売されているモデルは2020年にフェイスリフトされたモデルで、スペイン・ ビトリアの工場で生産されます。このフェイスリフトでは内外装の改良をはじめ、パワーユニットにも手が入るものとなりました。
ボディタイプは5mを切り最も短い全長4,895mmの「Kompakt(英国仕様ではL1)」をはじめ、全長5,140mmの「Lang(同L2)」、最も長い全長5,370mmの「ExtraLang(同L3)」の3種類が設定。合わせて用途に合わせて3種類の仕様が設定されており、貨物メインのパネルバンとなるKastenwagen(英国仕様はPanelVan)、貨客混在のMixto(英国仕様はCrewVan)、そして送迎用途や乗用用途を想定したTourerがあります。さらにヴィトー初のBEV(純電気自動車)となるeVito(eヴィトー)が2020年に追加されました。
日本市場には前任モデルとなるMB100DやT1N(スプリンター)などのメルセデスブランドのLCVを一時期インポーターや、建機のコマツなどが扱っていた時期もありましたが、現在LCVは正規導入されておりません。
メルセデス・ベンツ ヴィトー コンセプト紹介動画(約1分30秒)
ココがスゴイ!メルセデス・ベンツ ヴィトー
メルセデス・ベンツ ヴィトーを語るうえで外せないポイントが以下の5つです。
- 用途に合わせて3種類のボディタイプ/3種類の仕様が設定
- 乗用MPVとしても魅力的なTourer仕様
- Vクラスでは選択できない9人乗りも選択可能
- 新世代ダウンサイジングターボユニットの採用
- ドライバーにも荷物にも優しいAIRMATICエアサスペンションの採用
スタイリングとインテリア
- Vクラスとはひと味違うシンプルなエクステリアが魅力
- 欧州LCVならではの観音開きバックドアも選択可能
- インテリアの充実と新しいインテリアトリムの採用
- 車中泊にも便利なラウンジャーパッケージの設定
ヴィトーのボディタイプは3種類が設定されています。これらは全長およびホイールベースの差でルーフタイプは共通です。基本的なデザインは日本にも導入されるVクラスに準じたもので、伸びやかで立体的な造形です。しかし無塗装の樹脂バンパーや(カラードバンパーも選択可能)クロームパーツを抑えたエクステリア、リアの観音開きバックドアが選択できることなどはヴィトーが欧州LCVとしての質実剛健さを持ち、プレミアムなVクラスとはひと味違うシンプルな”プロツール”としての魅力を感じます。フェイスリフトでは三本のラインが強調された新デザインのラジエターグリルにアップデートされたほか、インテリジェントライトシステムのILSが採用されました。LEDのヘッドライト/デイタイムランニングライト/コーナリングライトなどで構成されるこのシステムは、車速や状況に応じて配光をリアルタイムで変化するだけでなく、ハイビーム時は照射範囲を制御することで対向車に対しての防眩効果をもちます。
ヴィトーは欧州LCVとしてただ質実剛健なだけではありません。もちろんシンプルなグレードもありますが、AMGブランドの専用エクステリアパーツを纏ったスポーツ仕様のLineSportsもラインナップ。日本の商用バンにはない、メーカー純正の”スポーツLCV”として、Tourerだけでなく、Kastenwagen(パネルバン)やMixto仕様にも設定されます。このほか、フェイスリフトではメルセデスの乗用サルーンやVクラスにも設定される鮮やかなヒヤシンスレッドなどが新たに選択可能になりました。
インテリアはエクステリアと比較してVクラスとの違いが多くあります。インストゥルメンタルパネルはVクラスが比較的にメルセデスのサルーンに近い造形なのに対して、ヴィトーはタッチスクリーンを中心に各コントロール部分を配置した専用設計のものでシタンなどにも近い造形です。エアコンの操作部もコンベンショナルで確実に操作ができる物理ボタン式のものが採用され、下部にはカップホルダーが配置されます。フェイスリフトでは新たに近年のメルセデスの各モデルに共通する航空機のタービンのようなエアベントが採用されました。
シートはフェイスリフトで新素材が採用されたほか、長時間でも疲れないコンフォートシートが運転席/助手席にも設定。シート配列はTourerの場合、一部仕様を除き基本的に前から2人+3人+3人の8人乗りの設定ですが、Vクラスでは選択できない助手席2人掛けシートを選ぶことで最大9人乗りとなります。9人フル乗車で活用するのもよいですし、3列目は取り外しできるので、2列6人+大容量のラゲッジのような使い方も可能です。ほかにもオプションで運転席/助手席で回転機能を選択すれば停車時に後席パッセンジャーとのコミュニケーションをとれるほか、ラウンジャーパッケージを選択すれば2列目3列目をフルフラットにできるので、車中泊や海や山のレジャーベースとしても活躍してくれそうです。
インフォテイメントシステムは、最大7インチのタッチスクリーンが設定。Audio30/Audio40とネーミングされたシステムは、AppleCarPlay/AndroidAutoでスマートフォン接続が可能です。
搭載されるエンジンと燃費
パワーユニットは、ディーゼルおよびEVの設定です。
- ディーゼル
2.0L 直4 ターボ 100CDI OM654 102PS(75kw)/270Nm(Kastenwagen/Mixtoのみ)
2.0L 直4 ターボ 114CDI OM654 136PS(100kw)/330Nm
2.0L 直4 ターボ 116CDI OM654 163PS(120kw)/380Nm
2.0L 直4 ターボ 119CDI OM654 190PS(140kw)/440Nm
2.0L 直4 ターボ 124CDI OM654 237PS(174kw)/500Nm(欧州左ハンドル仕様のみ)
2020年のフェイスリフトではディーゼルの全ての仕様でメルセデス・ベンツの次世代ダウンサイジングターボの2.0Lに統一されました。OM654型と呼ばれるこのユニットのポイントは燃費性能の向上と騒音/振動対策の強化。メルセデスのLCVでは初となる燃焼プロセスの採用のほか、アルミニウム製ハウジングとスチール製のピストンにNANOSLIDEシリンダーウォールコーティングや、アンモニアスリップ触媒(ASC)などを装備することで実現しています。燃費性能は116CDI仕様の欧州複合で16.3km/Lです。
出力によって5種類のチューニングが設定されており、欧州左ハンドル仕様のみとなりますが、Vクラス最強モデルとなるV300dに設定される237PS仕様をヴィトーでも選択可能です。これのほか204PSを出力するモーターを組み合わせたBEVのeヴィトーが設定されています。
駆動方式は、FRを中心に、欧州左ハンドル仕様には全てのパワーユニットにAWD仕様となる4×4が設定。一方、eVitoはFFとなるため、ひとつの車種でFF/FR/AWD全ての駆動方式が選択可能です。トランスミッションはバン仕様に6MTが設定されますが、Tourerは全ての仕様で多段化された9G-TRONICが組み合わされます。
走行性能とハンドリング
サスペンションはフロント:マクファーソン・ストラット、リア:セミトレーディングアームを採用。サスペンションはノーマル仕様でも欧州LCVとしてフル乗車および荷物を多く積んだ状態での高速走行でも安定性の高い設定がされていますが、さらにドライバー/乗員/貨物にもやさしいAIRMATICエアサスペンションも選択可能。ダンパーの伸びる側と縮む側それぞれ独立したバルブにて各輪ごとに状況に応じた調整が瞬時に行われます。一方、SportLineには走りのために引き締められた専用チューニングのスポーツサスペンションが設定。メーカー純正スポーツバンとして卓越した走りを提供します。
そのほか、左ハンドル欧州仕様で選択可能なAWDの「4×4」仕様は、さまざまな路面状況でも安定した走りを提供。日本の降雪地域や、アウトドアレジャーでも力を発揮しそうです。4×4仕様は高い走破性だけでなく、AWD化されても全高が2mを超えないのも魅力のひとつです。
安全面ではアクティブ・ブレーキ・アシストに加えて、アダプティブクルーズコントロールとしてヴィトーでは初となるDISTRONICが採用。ドライバーが設定した先行車に対して自動で加減速することで安全面だけでなくドライバーの負担を減らすことが可能です。
サイズとスペック
【全長×全幅×全高】5,140×1,928×1,914 mm(ミラー部分を含まず)
【ホイールベース】3,200mm 【トレッド】前/後:1,666 / 1,646mm
【車両重量 2,207kg
●エンジン
【構成】水冷直列4気筒ターボ DOHC16V フロント縦置き 気筒休止機構付
【総排気量】1,950cc 【直径×内径】 -×-mm 【圧縮比】15.5:1
【最高出力】163ps(120kw)/3800rpm 【最大トルク】380Nm/1400-2400rpm
【燃料容量】57L
●駆動系
【駆動方式】FR 【トランスミッション】9G-TRONIC
【サスペンション】(前)マクファーソンストラット / (後)セミトレーディングアーム
【ブレーキ】(前)ベンチレーテッドディスク / (後)ディスク
【タイヤ】(前後)-/-R-
●パフォーマンス
【最高速度】-km/h 【0-100km/h加速】-秒
【燃費】約16.3km/L(新欧州複合基準)【価格】欧州仕様 2022モデル:€54,547
歴史とトリビア
メルセデス・ベンツ ヴィトー関連の歴史とトリビアを簡単にご紹介します。
- 初代モデルは1996年のデビュー
- ワンボックスバンのMB100Dの実質的後継車種
- 内外装を豪華にした乗用専用仕様のVクラスの設定
- 3代目モデルは2014年のデビュー以来500,000台以上の販売
- 2020年にBEVのeVitoが追加
- FF(eVito)、FRおよびAWD(ディーゼル)、全ての駆動方式を設定
ライバル
MPVとしても使用可能なLCVベースのヴィトーに対して真っ向からライバルとなるのは、フォルクスワーゲンのT6.1トランスポーターです。乗用仕様となるマルチバンは新世代のT7にフルモデルチェンジされましたが、タフな用途も求められるトランスポーター系はT6.1が継続販売されています。欧州LCVとして長年の歴史を持つトランスポーターは、マルチバン(カラベル)譲りの作りの良さとLCVのユーティリティ性があり、ヴィトーにとって今後も強敵であり続けることでしょう。ほかにステランティスのシトロエン ディスパッチ/ジャンピーをはじめとする兄弟車や、ルノー日産三菱アライアンスのルノー トラフィック/日産 プリマスターの兄弟車など欧州には多くのライバルが存在します。
並行輸入するなら。オススメのグレードと価格情報
Vクラスが日本導入される一方、メルセデス・ベンツのLCVはかつて一部モデルが日本に導入されていましたが現在はVitoを含めて導入されておりません。メルセデス自身も日本ではサルーンやSUVを中心としたプレミアムモデルを中心に導入されており、質実剛健なプロツールとしてのメルセデスは今後も導入される可能性は残念ながら低いと思われます。そのため、確実に手に入れるなら並行輸入がおすすめです。ヴィトーの乗用仕様、Tourerのグレード構成は以下の通りです。左ハンドル欧州仕様、右ハンドル英国仕様共に設定されています。
グレード構成(左ハンドル欧州仕様)
- BASE
16インチスチールホイール、運転席/助手席パワーウィンドウ、遮熱ガラス、セントラルロック、12Vソケット、運転席/助手席/サイドエアバッグ、木製フロアパネル、横風アシストなどが装備(エアコンはオプション。オートエアコンのほかリアエアコンも選択可能) - PRO
(BASEに対して)ウィンドウエアバッグ、助手席折り畳み機能、2列目/3列目シート、ドライビングライトアシスト、電動エクステリアミラー、レインセンサー、ラジオ+2スピーカーなどが装備(エアコンはオプション。オートエアコンのほかリアエアコンも選択可能) - SELECT
(PROに対して)16インチ(一部仕様は17インチ)アルミホイール、カラードバンパー、助手席アームレスト、運転席/助手席コンフォートシート、マルチファンクションステアリング、花粉除去フィルター付きTEMPMATICセミオートエアコンなどが装備 - TourerEdition
(SELECTに対して)リアスモークガラス、リモコンドアオープナー、TEMPMATICオートエアコン、フロント&リアパーキングアシスト、7インチタッチスクリーン(Audio30)、後席左右の12Vソケットなどが装備 - LineSport
(TourerEditionに対して)エアロデザイン専用アルミホイール、LineSport専用バンパー、サイドスカート、クロームメッキラジエターグリル、レザーステアリング/シフトノブ、クロームインテリアパッケージなどが装備
グレード構成(右ハンドル英国仕様)
- PRO
17インチスチールホイール+フルホイールキャプ、助手席2人掛けシート、レザーマルチファンクションステアリング、ヒーテッドドアミラー、7インチタッチスクリーン(Audio30)、アクティブブレーキサポートなどが装備(エアコンはオプション。オートエアコンのほかリアエアコンも選択可能) - SELECT
(PROに対して)17インチアルミホイール、クロームメッキラジエターグリル、カラードバンパー、TEMPMATICオートエアコン、運転席/助手席コンフォートシート、クロームインテリアパッケージなどが装備 - SPORT
(SELECTに対して)AMGサイドスカート、スポーツサスペンション、ボンネットのグラフィックライン、ブラックレザーインテリア、フロントヒーテッドシート、リバースカメラ、ルーフレールなどが装備
現時点では日本に未導入のヴィトーですが、そのなかでもおすすめは、ロングボディのPROグレードに116CDIの163PS仕様の組み合わせです。無塗装バンパーにスチールホイールのエクステリアにシンプルな装備のPRO仕様は、質素ですがそのぶん上位グレードと比べて抑えられた価格が魅力的です。これに日本で乗るにはオプションでエアコンの追加をおすすめします。フル乗車でも仕事のツールやレジャーアイテムをたっぷりと載せることができるロングボディに、パワーユニットはフル乗車/多くの荷物を積載した状態でもある程度余裕のある116CDIの163PSユニットの組み合わせは、MPVとしても使えるシンプルなメルセデスとしてのチョイスです。あとは用途に応じてフルフラットになるシートのオプションなど、好みの仕様をビルドしてみるのもよいでしょう。
現在の日本におけるメルセデス・ベンツブランドに対するイメージは「プレミアム性」ですが、かつてはこれに加え「質実剛健」のイメージがありました。華美な装飾をせず、シンプルで質がよく永く使える実用車としての側面です。この質実剛健なメルセデスをいま味わえるヴィトー。お仕事にもレジャーの相棒にも活躍してくれることでしょう。日本に導入されるメルセデスとはひと味ちがうベクトルの一台を選んでみませんか?
- メルセデス・ベンツ ヴィトー Tourer PRO 116CDI Lang 9G-TRONIC(+セミオートエアコン)(左ハンドル欧州仕様)
- メルセデス・ベンツ ヴィトー Tourer BASE 114CDI Lang 9G-TRONIC(+2列目と3列目シートとセミオートエアコン)(左ハンドル欧州仕様)
- メルセデス・ベンツ ヴィトー Tourer PRO 114CDI L2 9G-TRONIC(+セミオートエアコン)(右ハンドル英国仕様)
ほかにも右ハンドル英国仕様をはじめ、貨物仕様のパネルバンや貨客混在仕様、ハイパワーユニットやAWDの4×4、走りも楽しむスポーツバンのLineSportなどユースケースに合わせた多くの仕様を並行輸入できますので、お気軽にお問い合わせください。
(€1=130/£1=155円時・現地値引き交渉前)
(現地値引き交渉前価格:€54,547)\9,484,000
(現地値引き交渉前価格:€50,729)\8,894,000
(現地値引き交渉前価格:£41,862)\8,698,000
掲載価格について(為替差益、現地ディスカウント還元!)
※ウィズトレーディングでは参考乗り出し価格例として新車、中古車は掲載時の為替レートで表記しておりますが、お見積り等はご依頼時点の為替レートを適用、差益分があれば還元させていただきます。
また、欧州各国の仕入れ先はディーラーとの価格交渉も頑張っております。これらのディスカウントも当然、皆様へのご提案価格へ反映させていただきます。
現地との綿密な相談による「正確さと速さ」をモットーにしています
海外では仕様・オプション等の位置づけが日本の慣習と異なることも多く、並行輸入では注意が必要です。新車・中古車共にご納得のできる仕様を確実にご納車出来るように、時差を考慮しつつ、仕入れ先とは何度も仕様確認や質問事項をやり取りしており、正確さと速さをモットーに務めております。