欧州LCV(ライト・コマーシャル・ヴィークル:商用車)のなかでも最も大きい全長5mを超えるフルサイズクラスは、日本で販売される一般的な商用バンよりも一回り以上大きく国産車では代わりのない存在です。近年では久々にこのジャンルとしてフィアット デュカトが日本正規導入されることで話題になりましたが、現時点では架装用ベースの用途としてBtoB販売がメインのようです。
欧州にはほかにも多くのフルサイズLCVがありますが、そのなかには国産メーカーのモデルもあります。今回は日産のフルサイズLCVであるインタースター(NISSAN Interstar)を解説。商用仕様のパネルバンを中心に概要・スペック・価格・並行輸入で乗るための情報を解説します。
日産 インタースターとは
インタースターは日産の全長5mを超えるフルサイズLCVです。ボディサイズは最もコンパクトなL1H1仕様で全長:5,048mm×全幅:2,070mm×全高:2,307mmと、全長こそ国産車ではハイエースのスーパーロングに近いサイズですが、横幅は大きく、最長のL4ボディでは全長6,848mmと堂々とした体躯になります。
初代モデルは1999年、日産ブランドで販売される大型LCVのブランニューモデルとしてデビューしました。これは1997年にデビューしたルノー マスターの2代目モデルの兄弟車で、日産がルノーと提携したことにより生まれました。日産が欧州で販売していたバネット(日本では初代バネット・セレナ)のように丸みを帯びたフロントなどファニーな印象のデザインですがフルサイズLCVのため各段に大きなサイズとなります。欧州では小さい方からキュビスター(ルノー カングーの日産版)、プリマスター(同トラフィック)、インタースターと当時の欧州日産がラインナップしていたLCV三兄弟の長男的な存在で、パネルバンのほか乗用仕様や数多くの架装ベースとしても支持を得ました。この初代モデルは日本にも2000年の東京モーターショーに「X-Cargo」の名前で右ハンドルモデルが参考出品されましたが残念ながら市販化はされませんでした。
その後、2010年には兄弟車であるマスターに合わせて2代目にフルモデルチェンジし、ネーミングが当時の日産LCVラインナップに合わせて「NV400」になりました。しかし、2021年の新型小型LCV「タウンスター」のデビューに合わせて再びインタースターの名前に戻されて現在販売されています。2代目モデルデビューから10年以上が経過していますが、その間にもパワーユニットまで手が入る改良を行うなど商品力を維持する改良を続けており、現在でも好調なセールスを記録しています。
初代モデル以降、インタースター(NV400)が日本で展開した実績はありませんが、唯一東京消防庁がゼロエミッション救急車としてNV400の電気自動車仕様をベースにした救急車を導入していますので、街で見掛けた方もいらっしゃるかも知れません。
ココがスゴイ!日産 インタースター
日産 インタースターを語るうえで外せないポイントが以下の5つです。
- 10種類の荷室容量、最大4.4mの荷室長、最大1587kgの積載量を設定
- お仕事からバンライフまで幅広く使える広大なカーゴスペース
- コンパクトでハイパワー/低燃費/クリーンなツインターボディーゼルユニット
- FF/FR選べる駆動方式
- アルミバンほか多くの架装のベースに対応
スタイリングとインテリア
- 4種類のホイールベース×3種類のルーフが設定
- 日産の乗用車とも共通性のあるエクステリアデザイン
- 収納が多く広々とモダンなインテリア
- 快適な仕事場としても活躍する機能性
インタースターのボディタイプは、全長は最も短い5,048mmのL1から、5,548mmのL2、6,198mmのL3、6,848mmのL4の4種類が設定されており、全高は2,307mmのH1、2,498~2,557mmのH2、2,744~2,815mmのH3の3種類が設定されています。国産バンと比べると一回り以上大きいサイズですが欧州のライバル車種と比べると若干コンパクトな仕様もあり、全長と全高の組み合わせは使い方や積載する貨物に合わせて選択できます。
エクステリアデザインは兄弟車のマスターとは別にデザインされており、デイタイムランニングライトを統合したシャープなヘッドライトやインターロックグリルなど最新のプリマスターや日産の乗用車とも共通性があるものに仕上がっています。これに加えて空力性能を考慮された設計がされており、投影面積の大きいフルサイズLCVでも高速安定性や燃費性能の向上にも寄与しています。パネルバン仕様ではリアドア以降がスチールパネルになっていますが、この部分を大きな広告スペースとしてお店や会社をアピールに一役買いそうです。
リアドアはスライドドアと、バックドアは欧州LCVのアイコンのひとつと言える観音開きが設定されています。180度まできっちり開くだけでなく、一部仕様ではさらに大きく開き、荷室にイージーアクセスが可能な270度まで開くドアも設定されています。
インパネシフトとタッチスクリーンを統合したインストルメントパネルをはじめ、インテリアはクリーンでモダンな印象です。基本的にパネルバン仕様はフロント1列で以降は荷室になりますが、車幅が広いボディのため横一列に大人3人が余裕で座れる室内空間があるほか、仕様によっては中央席のシートバックに運転席に向けてノートパソコンなどが使える回転式テーブルや、助手席にも折り畳みテーブルがあり、モバイルオフィスとしても快適に使える機能性を備えています。ほかにもリアカメラの映像をバックミラーに表示する機能や助手席側サンバイザーにブラインドスポットミラーを装備し、大きい車体でも死角を減らして取り回しをよくする工夫がされています。
人間工学に基づき設計されたシートは運転席1名+助手席2名分が設定されています。シート表皮は標準で設定されるファブリックのほか、オプションで汚れが付きづらいフェイクレザーも選択可能です。長い時間を過ごす室内空間には収納も多く、ダッシュボードの上にはUSB充電端子を備えた追加コンパートメントをはじめ、各所に効果的な収納を配置し、シート下にもツールボックスなども入れられる容量の収納があります。
インフォテイメントシステムは7インチのタッチスクリーンにスマートフォンミラーリング(AppleCarPlay/AndroidAuto対応)もしくは最新のNissanConnectが組み合わされます。
搭載されるエンジンと燃費
パワーユニットは、ディーゼルのみの設定です。
- ディーゼル
2.3L 直4ターボ dCi110 110PS(81kw)/330Nm
2.3L 直4ターボ dCi135 135PS(99kw)/360Nm
2.3L 直4ターボ dCi150 150PS(110kw)/385Nm
2.3L 直4ターボ dCi180 180PS(132kw)/400Nm
設定されるのは全て直4 2.3Lディーゼルにツインターボを組み合わせたユニットになり、出力は110PS(dCi110)、135PS(dCi135)、150PS(dCi150)、180PS(dCi180)の4種類が駆動方式に合わせて設定されています。大きなボディサイズに対して一見コンパクトに感じますが、効率的で十分な動力性能を備えるほか、設定されるすべてのパワーユニットで最新の欧州排気ガス規制(Euro6d-FullもしくはEUROVIe)をクリアしてます。燃費性能はdCi130仕様の欧州複合で7.5km/Lです。
駆動方式はFFとFRの2種類が設定されており、最大限の荷室空間確保と低床化により積み下ろしのしやすいFFと、前後に重量を分散しハンドリング性能が高く、重量物の積載時や牽引時に力を発揮するFRを選択可能です。トランスミッションは6速MTのほか、2ペダルAMT(セミオートマチック)の6速クイックシフトが一部仕様に設定されています。
積載量と荷室空間
インタースターの荷室に関するスペックは以下の通りです。同じボディタイプでも各項目のスペックに幅があるのは、駆動方式や車両重量による仕様により異なるためです。パネルバンには荷室との間に強固なフルスチールのバルクヘッドが装備されますが、オプションで荷室が確認可能なガラスウィンドウつきのものや、メッシュタイプのバルクヘッドも選択可能です。荷室空間は最大5つのユーロパレットが積み込める広大なスペースが用意されており、荷物を運ぶだけでなく、キャンピングやバンライフのベースとしても使えそうな広さです。
ボディタイプ | L1H1 | L1H2 | L2H2 | L2H3 | L3H2 | L3H3 | L4H2 | L4H3 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
最大荷室長(mm)(A) | 2,583 | ← | 3,083 | ← | 3,733 | ← | 4,383 | ← |
最大荷室幅(mm)(B) | 1,765 | ← | ← | ← | ← | ← | ← | ← |
ホイールアーチ間荷室幅(mm)(C) | 1,380 | ← | ← | ← | 1,080~1380 | ← | 1,080 | ← |
最大積載容量(立方メートル) | 8.0 | 9.0 | 10.8 | 12.3 | 12.4~13.0 | 14.2~14.8 | 14.9 | 17.0 |
最大積載量(kg) | 901~1,587 | 883~1,570 | 1,322~1,522 | 1,296~1,496 | 1,151~1432 | 1,128~1423 | 1,111~1,207 | 1,040~1,160 |
サイズとスペック
【全長×全幅×全高】5,548×2,070×2,499 mm(ミラー部分を含まず)
【ホイールベース】3,682mm 【トレッド】前/後:1,750 / 1,730mm
【車両重量】 -kg
●エンジン
【構成】水冷直列4気筒ターボ DOHC16V フロント横置き
【総排気量】2,299cc 【直径×内径】 -×-mm 【圧縮比】-:1
【最高出力】180ps(132kw)/3,500rpm 【最大トルク】400Nm/1,500rpm
【燃料容量】105L
●駆動系
【駆動方式】FF 【トランスミッション】6AMT(クイックシフト)
【サスペンション】(前)- / (後)-
【ブレーキ】(前)- / (後)-
【タイヤ】(前後)225/65R16
●パフォーマンス
【最高速度】165km/h 【0-100km/h加速】-秒
【燃費】約-km/L(新欧州複合基準)【価格】欧州仕様 2023モデル:€51,955
歴史とトリビア
日産 インタースター関連の歴史とトリビアを簡単にご紹介します。
- NV400を経てインタースターの名前が復活
- ルノー マスターの兄弟モデル
- 東京モーターショーにX-Cargoの名前で参考出品した実績あり
- NV400の電気自動車仕様が東京都の救急車に採用
ライバル
インタースターが属する欧州で最も大きいフルサイズLCVのクラスは、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲンなど馴染みのある乗用車メーカー以外にも、まず日本ではお目にかかれないフォルクスワーゲングループのMANやイヴェコなど欧州商用車専門ブランドもラインナップしています。そのなかでも最も近しいライバルとしてフォード トランジットを挙げます。数あるトランジット兄弟のなかでも最も大きく、インタースター同様多くのボディタイプと駆動方式が組み合わされるトランジットは、長年欧州で高い支持を得ており、欧州LCVの代名詞とも言えるモデルです。
- ルノー マスター
- フォード トランジット
- メルセデスベンツ スプリンター
- フォルクスワーゲン クラフター
- プジョー ボクサー
- フィアット デュカト
- MAN TGE
- イヴェコ デイリー
並行輸入するなら。オススメのグレードと価格情報
冒頭の通り、フィアット デュカトが欧州フルサイズLCVとして久々に日本で導入されることが話題になりましたが、インタースターは歴代モデルをメーカーが正規で導入した実績がないため、今後も正規で導入される可能性は残念ながら低いと思われます。
これより、確実に手に入れるなら並行輸入がおすすめです。インタースター・パネルバンのグレード構成は以下の通りです。パネルバン仕様は左ハンドル欧州仕様、右ハンドル英国仕様共に設定されています。
グレード構成(左ハンドル欧州仕様)
- VISIA
ヒーテッドドアミラー、観音開きバックドア(180度開閉)、ウィンドウなしバルクヘッド、助手席ダブルベンチシート、Bluetoothハンズフリー、フロントパワーウィンドウ、オンボードコンピューター、運転席エアバッグ、105L燃料タンク、横風アシストなどが装備(エアコンはオプション) - ACENTA
(VISIAに対して)助手席サンバイザー内蔵ブラインドスポットミラー、中央シート回転式テーブル、コンパートメント12Vソケット、マニュアルエアコン、リアパーキングエイド、スピードリミッター付きクルーズコントロールなどが装備 - N-CONNECTA
(ACENTAに対して)ステップ付きリアバンパー、コンプリートホイールハブキャップ、フロントフォグランプ、荷室LEDライト、スマートフォンミラーリング+7インチタッチスクリーン、リアビューカメラなどが装備 - TEKNA
(N-CONNECTAに対して)ハイビームアシスト、運転席シートヒーター、スマートフォンワイヤレス充電、助手席エアバッグ、運転席サイドエアバッグ、フロントオートエアコン(急速暖房機能付き)、AUX端子、USBポート、NissanConeect+7インチタッチスクリーン、レーンキーピングアシスト、ブラインドスポット警告などが装備
グレード構成(右ハンドル英国仕様)
- VISIA
16インチスチールホイール+センターキャップ、観音開きバックドア(180度開閉)、ステップ付きリアバンパー(FR仕様)、ヒーテッドドアミラー、フルスチールバルクヘッド、助手席サンバイザー内蔵ブラインドスポットミラー、フロントパワーウィンドウ、運転席エアバック、Bluetoothハンズフリー、AUX端子、USBポート、集中ドアロック、ヒルスタートなどが装備(エアコンはオプション) - ACENTA
(VISIAに対して)16インチスチールホイール+フルホイールカバー(FF仕様)、観音開きバックドア(270度開閉)、ステップ付きリアバンパー(FF仕様)、防音バルクヘッド、集中ドアロック、助手席エアバッグ、リアパーキングセンサー、105L燃料タンクなどが装備(エアコンはオプション) - TEKNA
(ACENTAに対して)マニュアルエアコン、フロントフォグランプ、オートマチックヘッドライト、NissanConeect+7インチタッチスクリーン、中央シート回転式テーブル、フロント/リアパーキングセンサーなどが装備 - TEKNA+
(TEKNAに対して)オートハイ/ロービーム、レーンキーピングアシスト、ブラインドスポット警告などが装備
日産が欧州で展開するLCVのなかで最も大きなインタースターですが、そのなかでもオススメは左ハンドルのパネルバンのN-CONNECTAグレード、FFのL2H2ボディにdCi180と6速クイックシフトの組み合わせです。国産バンでは難しいサイズの長尺物や背の高い荷物でも余裕で積み込められるL2H2ボディに、日本で乗るのに必須であるエアコンや、カーナビゲーションとして使えるスマートフォンミラーリングなどを標準装備するほか、モバイルオフィスとしてのアイテムも装備するN-CONNECTAグレードに、フル積載でも余裕のあるハイパワーなdCi180ユニットとオートマチック限定免許のユーザーでも運転可能な2ペダルクイックシフトの組み合わせは、大きいカーゴスペースを生かして荷物を運ぶだけでなく、趣味のトランスポーターやキャンパー、バンライフのベースとしてセルフビルドなど多様な用途に活用できるチョイスです。国産バンとはひと味違うインタースターを選んで楽しい使い方を考えてみませんか。
- 日産 インタースター パネルバン N-CONNECTA L2H2 Frontantrieb 2.3 dCi180 6QS(左ハンドル欧州仕様)
- 日産 インタースター パネルバン ACENTA L2H2 Frontantrieb 2.3 dCi110 6MT (左ハンドル欧州仕様)
ほかにも右ハンドル英国仕様のほか、日本で乗るのにもう少しコンパクトなL1H1仕様をはじめ、より長く高さのあるL3H3ボディやL4H3ボディ、そして運転を積極的に楽しみたいユーザーには6MT仕様も各種並行輸入可能ですのでお気軽にお問い合わせください。
(€1=140円時・現地値引き交渉前)
(現地値引き交渉前価格:€51,955)\9,623,000
(現地値引き交渉前価格:€43,923)\8,351,000
掲載価格について(為替差益、現地ディスカウント還元!)
※ウィズトレーディングでは参考乗り出し価格例として新車、中古車は掲載時の為替レートで表記しておりますが、お見積り等はご依頼時点の為替レートを適用、差益分があれば還元させていただきます。
また、欧州各国の仕入れ先はディーラーとの価格交渉も頑張っております。これらのディスカウントも当然、皆様へのご提案価格へ反映させていただきます。
現地との綿密な相談による「正確さと速さ」をモットーにしています
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