欧州LCV(小型商用車)ベースのMPVと言えば、日本ではルノー カングーの独壇場となっていますが、欧州市場ではカングー以外にも魅力的なモデルが多数存在します。2018年、カングーに対して真っ向から勝負を挑むモデル群をPSAグループがリリースしました。今回はその中から長兄ともいえるプジョー リフター(PEUGEOT Rifter)を解説、SUV要素を盛り込んだMPVモデルの概要・スペック・価格・並行輸入で乗るための情報をご紹介します。
プジョー リフターとは
プジョー リフターは、商用バンのパルトネールの乗用仕様という位置づけ。旧型モデルはパルトネール ティーピーと呼ばれていましたが、2018年のフルモデルチェンジでリフターとして独立しました。バン仕様は変わらずパルトネールの名前を継承しています。コンパクトLCVのビッパーが販売終了になったため、同社のLCVの中で一番小さなモデルになります。
リフターの大きさは全長:4,403(4,753)mm×全幅:1,848mm×全高:1,878(1,882)mmと(カッコ内はLONG仕様)と幅はさておき、標準車は直接的なライバルのルノーカングーに近いサイズ。全長が長い3列シートのLONG仕様だとトヨタ ノア兄弟、日産 セレナ等の国産ミドルサイズミニバンと概ね同じと言えるでしょう。
初代モデルのデビューは1996年。シトロエン ベルランゴが兄弟車でした。初代、2代目共に10年以上販売されたロングセラーで、今回のモデルチェンジも10年振りです。兄弟車には従来からのシトロエン ベルランゴに加え、最近PSAグループ入りしたボクスホール/オペルのコンボライフ、近日中にはトヨタがプロエースシティとして投入することが予定されており、4兄弟になります。
リフターが兄弟モデルと最も違う点は、SUVの要素を色濃く盛り込んだこと。SUVは欧州でも人気のジャンルですが、MPVにSUV的要素を盛り込んだモデルはあまりありません。プラットフォームは先代モデルに引き続きEMP2プラットフォームをベースに各所がアップデートされています。
ココがスゴイ!プジョー リフター
プジョー リフターを語るうえで外せないポイントが以下の5つです。
- 標準とロングの2つのボディタイプ。どちらでも3列7人乗りが選択可能
- MPVにも先進の安全技術を導入
- ディーゼルは全て新世代ユニットに移行、ATミッションは最新の「EAT8」に
- 欧州LCVをベースにしているため折り紙つきの耐久性
- AWD仕様を示唆するショーモデル、4×4コンセプト
プジョー リフター CM動画(約30秒)
スタイリングとインテリア
- SUV要素を盛り込んだ「ギア感」のあるエクステリア
- ロングモデルを選んでも国産ミニバンに近い全長
- 最新のPEUGEOT i-CockpitをMPVにも採用
- 2列5人乗りと3列7人乗りが選択可能
エクステリアのポイントは、やはりSUV要素を盛り込んだデザインです。リフターはLCVであるパルトネールに対してフェンダーアーチやバンパーなどにマットブラックの樹脂パーツを組み込むことで「ギア感」や「ツール感」を上手く演出しています。兄弟車のシトロエン ベルランゴもSUV風のエッセンスを巧みに取り入れていますが、リフターの方がより本格的といえると思います。
スペース効率を求めたベースモデルに対してSUV要素を盛り込む手法は、日本でもハイトワゴン軽自動車のをベースにしたスズキ スペーシア・ギアがありますが、案外MPVとSUV要素の相性は良いように感じます。
ほかにも主張が強めで厚めのグリルや牙のような鋭いLEDのラインが印象的なヘッドライト周辺の造形は、最新プジョーのデザインテイストである新型508や208などと共通する意匠になっており、他の兄弟車との差別化もしっかりできています。
ボディタイプはSTANDARDとホイールベースが延長されたLONGの2種類。どちらでも3列シート7人乗り仕様が選べます。リアドアはバンと違い観音開きではなく、ハッチバック式ですが狭い場所でも荷物を取り出せるガラスハッチが装備されています。
インテリアでまず目に入るのは、小径なステアリングとインパネに対して高めの位置に配置されたメーター類です。208以降、プジョーが推進している「PEUGEOT i-Cockpit」のコンセプトをMPVにも取り入れています。インパネなどは兄弟車種で共有するのが一般的ですが、リフターのようにメーカーのアイデンティに関わるところはしっかり専用部品で作り分けられているようです。
一見奇抜に見えるi-Cockpitですが、リフターは元から着座位置が高いため、メーター類を見上げるようにはならないのに加え、小径のハンドルもアシスト量をしっかり考えられてチューニングされているため、小径でもハンドリングは良好かつ、小回りもしっかり効きます。
ラゲッジルームの使い勝手の良さは、LCVをベースにするだけあって折り紙付き。SUVでは積み込めないような量の荷物を軽々飲み込みます。3列シート7人乗り仕様は旧型モデルにもオプション設定されていましたが、ボディ自体は標準車と同じものでした。しかし、リフターではボディサイズを拡大(ホイールベースを延長)したLONGボディが設定されたため、3列目シートの快適性が大幅にアップ。7人乗りのフル乗車でもしっかり荷物が詰めますし、2列シート+広大なラゲッジとしての使い方にも応用できます。
インフォテインメントシステムはインパネ中央に配置される8インチタッチスクリーンを採用。スマートフォンのミラーリングだけでなく、オプションでワイヤレス充電プレートも用意されています。
搭載されるエンジンと燃費
搭載されるエンジンはガソリン1機種(2仕様)、ディーゼル1機種(3仕様)の5種類。
- ガソリン 1.2L 直3ターボ
PureTech110 110PS(81kw)/205Nm 6MT
PureTech130 130PS(96kw)/230Nm EAT8 - ディーゼル 1.5L 直4ターボ
BlueHDi75 75PS(56kw)/230Nm 5MT
BlueHDi100 101PS(75kw)/250Nm 5MT
BlueHDi130 130PS(96kw)/300Nm 6MT/EAT8※2020年まで
ガソリンは1.2L 直3のPureTech110。これは日本に正規輸入されるPSA各車にも搭載されているお馴染みのもので、2015年から2018年まで4年連続でインターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーを受賞している力作ユニットです。動力性能と燃費のバランスが良く、ガソリンではベストな選択と言えるでしょう。
ディーゼルはチューニングにより出力が違いますが、全て1.5L 直4のBlueHDi。フォードとも共有する新世代ディーゼルユニットで高い環境性能が魅力です。AdBlueを用いてクリーンな排気ガスに加え、ハイパワー版の130PS仕様でも欧州複合で15.8~17.8km/Lと高い燃費性能を実現しています。リフターもデビュー直後には旧世代のBlueHDiユニットも設定されていましたが、これでパワーユニットの更新が完了しました。
駆動方式は全車FFです。トランスミッションは5MTがBlueHDi75と100に、6MTがPureTech110とBlueHDi130に、2ペダルAT仕様のEAT8はPureTech130(欧州仕様のLHD)とBlueHDi130で選択できます。2ペダルATは2019年春以降、待望の8速となる最新の「EAT8(アイシンAW製)」にアップデートされました。近年のPSAの各モデルに採用が広がっているこのEAT8はトルクコンバーター式ならではの変速の滑らかさと、多段化による燃費性能向上が魅力です。
走行性能とハンドリング
サスペンションはフロント:マクファーソンストラット、リア:ウィッシュボーンが採用されています。構成と組み合わせ自体は兄弟車と基本同じですが、各メーカー毎にそれぞれ味付けがされているようです。ご存知の通り猫脚で有名プジョー。実際リフターの乗り心地は同セグメントのなかでは、かなり良いものであると現地メディアは評価しています。
なお、今のところリフターにAWDモデル※はありませんが、オプション設定されるトラクションコントロールシステムの「Advanced Grip Control」選択すれば、悪路でもかなり安定した走りが実現できます。
※プレスリリースではDANGEL社による4×4仕様のオプション提供が謳われています。ジュネーブショーで公開されたリフター 4×4コンセプトもDANGEL社の手によるものです。(次項参照)
AWD仕様を示唆?リフター 4×4 コンセプト
リフターは2018年のジュネーブショーでデビューしましたが、この時、会場の主役となったのがアウトドアブランド「OVERLAND」とのコラボモデル「リフター 4×4コンセプト」です。
DANGEL社の4×4システムが組み込まれたAWD仕様で、斬新なルーフ上に展開するテント等のアウトドア装備に加え、濃いガンメタにイエローのアクセントカラーを配したカラーリングで多くの注目を集めました。リフターといえばこのショーモデルを思い浮かべる方も多いでしょう。
DANGEL社は市販車をベースに4×4システム等の開発・組込(AWD化)を行うメーカー(というか工房)で、プジョー・シトロエンとは古くからのビジネスパートナーです。まだリフターやベルランゴの設定はありませんが、トラベラーやスペースツアラーは既に商品化されており、バン仕様であるパルトネールやベルランゴも発売間近のようです。
相応のコスト・納期はかかるものの、どうしてもヘビーデューティーな仕様をお求めの方には貴重な選択肢ではないでしょうか。
サイズとスペック
【全長×全幅×全高】4,753×1,848×1,882 mm
【ホイールベース】2,975mm 【トレッド】前/後:1,553 / 1,567mm
【車両重量】1,593kg
●エンジン
【構成】水冷直列4気筒直噴ターボ DOHC16V フロント横置
【総排気量】1,499cc 【直径×内径】75×84.8mm 【圧縮比】N/A
【最高出力】130ps(96kw)/3750rpm 【最大トルク】300Nm/1750rpm
【燃料容量】61L
●駆動系
【駆動方式】FF 【トランスミッション】8AT
【サスペンション】(前)マクファーソンストラット / (後)ウィッシュボーン
【ブレーキ】(前)ベンチレーテッドディスク / (後)ディスク
【タイヤ】(前後)215/60R17
●パフォーマンス
【最高速度】184km/h 【0-100km/h加速】-秒
【燃費】約15.8-17.8km/L(新欧州複合基準)【価格】英国仕様 2019モデル:£28,115
歴史とトリビア
リフター関連の歴史とトリビアを簡単にご紹介します。
- 歴代モデルは10年以上販売されたロングセラー
- 現在販売されているモデルは3代目モデル
- 先代モデルのパルトネール ティーピーはこのセグメントでトップセールスを誇った
- 元TopGear司会者のジェレミー・クラークソンは実用車として高い評価を下している
ライバル
リフターをはじめとするPSA兄弟車が最もライバル視するのは、ルノーカングーである※ことは間違いないでしょう。現行カングーはフルモデルチェンジの準備が進んでいるようですが、リフターのようなSUV要素を持ったモデルは今のところないようです。SUV要素を持ったMPVとしては、フォルクスワーゲン クロスキャディがありますが、モデル末期が近づいており、リフターの方が優勢と言えるでしょう。フォード トルネオコネクトは実用ミニバン的なMPVで遊びゴコロがやや希薄です。
※PSAではリフターやベルランゴの乗用モデルは実質的に車格がアップしたことに伴い、カングーは直接的な競合モデルではない、との見解を示しています。
- シトロエン ベルランゴ
- ボクスホール コンボライフ
- トヨタ プロエースシティ(発売予定)
- ルノー カングー
- フォルクスワーゲン クロスキャディ
- フォード トルネオコネクト
並行輸入するなら。オススメのグレードと価格情報
カングーが大きな支持を受けている日本市場。新世代BlueHDiディーゼルを搭載したリフターが導入されたら人気となりそうですが、今のところ正規導入の予定などはアナウンスされておりません。そのため、リフターを手に入れるには並行輸入が確実な方法です。
グレードは3種類。ベーシックなACTIVEをはじめ、8インチタッチスクリーンや16インチアルミホイールなど装備が充実したALLURE、そして専用グリルやインテリアトリム、ブラック仕上げされたルーフバーなどスポーティな要素を盛り込んだGTLineが設定されています。この各グレードに対して、標準サイズのSTANDARDとLONGのボディがそれぞれ選択できます。
そのなかでもGTLineに新世代BlueHDi130とEAT8の組み合わせをオススメします。これはレジャーにグランドツーリングにと、どこまでも快適に走れるオールマイティなMPVとしてのチョイスです。5人乗り7人乗りどちらも選べますので、ボディタイプはライフスタイルに合わせてお選びください。
- プジョー リフター GTLine LONG 1.5L BlueHDi130 EAT8
- プジョー リフター GTLine STANDARD 1.2L PureTech110 Manual
また、3ペダルのマニュアルトランスミッションで操りたい方には吹け上がりも軽やかで燃費良く、6速ミッションが組み合わせられるPureTech110の組み合わせもオススメです。もちろんALLUREグレードや130PS仕様以外のBlueHDiの組み合わせ等も並行輸入できますので、お気軽にお問い合わせください。
(£1=135円/€1=125円時・値引き交渉前価格)
(現地価格:£29,020)\5,482,000⇒2021モデル特価案内
(現地価格:€24,490)\4,503,000⇒2021モデル特価案内
ディーゼル車をご希望の方へ
参考乗出し価格が掲載されていない場合には、別途お見積りいたしますのでお問合せ下さい。
なお、ディーゼル車を取り巻く環境は年々厳しくなっています。ディーゼルエンジン搭載車をご希望の場合には以下の記事もご覧ください。
掲載価格について(為替差益、現地ディスカウント還元!)
※ウィズトレーディングでは参考乗り出し価格例として新車、中古車は掲載時の為替レートで表記しておりますが、お見積り等はご依頼時点の為替レートを適用、差益分があれば還元させていただきます。
また、欧州各国の仕入れ先はディーラーとの価格交渉も頑張っております。これらのディスカウントも当然、皆様へのご提案価格へ反映させていただきます。
現地との綿密な相談による「正確さと速さ」をモットーにしています
海外では仕様・オプション等の位置づけが日本の慣習と異なることも多く、並行輸入では注意が必要です。新車・中古車共にご納得のできる仕様を確実にご納車出来るように、時差を考慮しつつ、仕入れ先とは何度も仕様確認や質問事項をやり取りしており、正確さと速さをモットーに務めております。
画像と動画
プジョー リフター コンセプト動画(約35秒)